福岡県の葬儀における作法としきたり
古くから外国との交流窓口として栄えた福岡県は、主要産業や歴史的な違いにより北九州・福岡・筑豊・筑後の4エリアに分かれています。
長い歴史を誇る福岡県では、葬儀におけるしきたりにも、伝統的なものが多く残されているようです。
そこで本記事では、九州最大の人口を誇る福岡県の葬儀にまつわるしきたりについて、詳しく紹介します。
地域ごとの葬送習慣の違いにも触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
伝統的なしきたりが残る福岡県の葬儀
葬儀の小規模化・簡素化が進む現在の日本では、全国的に葬儀における伝統的な習慣も失われつつありますが、福岡県ではしっかりと受け継がれているようです。
浄土真宗門徒の多い福岡県ですが、禅宗である臨済宗や曹洞宗寺院では檀家さんとの結びつきが強いのも影響しているのかもしれません。
勝俣班(かつまたはん)が葬儀を手伝う
日本各地には「隣組(となりぐみ)」などと呼ばれる、近隣の10軒ほどを1組とした相互扶助組織がありますが、福岡県では「勝俣班(かつまたはん)」と呼ぶ地域もあるようです。
組内で不幸があった場合は、「勝俣班」の方々が手伝うのが習わしとなっていましたが、近年では都市部を中心に減少しているようです。
こういった傾向は全国的なもので、福岡県に限ったことではありませんが、地域の助け合いがみられなくなるのは少し寂しい気もします。
お香典とは別に用意する通夜見舞い(つやみまい)
福岡県の通夜は遺族や近しい親族中心で行われますが、参列者はお香典とは別に「通夜見舞い(つやみまい)」を持参するのが通例となっているようです。
「通夜見舞い」とは、夜を徹して故人に付き添う遺族のために、お菓子や果物など簡単に食べられるものを差し入れるしきたりです。
山陰地方では「夜伽見舞い(よとぎみまい)」、中部地方では「お淋し見舞い(おさびしみまい)」など呼び方は地域ごとに異なるものの、同様の習慣は各地に残されています。
小さめの骨壺に部分収骨
福岡県では、荼毘(だび)に付した焼骨の一部のみを骨壷に納める「部分収骨」が一般的となっています。
そのため利用する骨壷も5寸(約15㎝)ほどの大きさが主流で、喉仏だけを納める地域では3寸(約9cm)を用いることもあるようです。
収骨を行う際には素材の異なる箸(木材と竹など)を1本ずつ使用し、二人一組で遺骨を拾うのが作法とされています。
「部分収骨」の場合、多くの遺骨が収骨されずに残りますが、火葬場などに設けられた慰霊塔などに納められるため心配ありません。
本位牌と野位牌(のいはい)
福岡県の葬儀では白木の位牌を大小二つ用意する習慣があり、大きい方は祭壇に安置され、小さい方は副葬品として棺に納めるのが通例となっているようです。
小さいほうの位牌は「野位牌(のいはい)」と呼ばれ、もともとは土葬時代に埋葬場所の上に置かれていました。
しかし火葬率が99%を超える現在では、基本的にお墓に置かれることはないようです。
一方大きい方の位牌は、四十九日法要まで自宅の後飾り祭壇に安置され、忌が明けてから本位牌に入れ替えられます。
役目を終えた白木位牌については、菩提寺でお焚き上げされるケースが多いようです。
出棺時の伝統的な風習
仏式での葬儀では「故人の魂が迷わず浄土に旅立てるように」との願いが込められた「棺回し(ひつぎまわし)」や「茶碗割(ちゃわんわり)」といった儀式が全国各地に残されていますが、福岡県でも同様に行われています。
「棺回し」は地域によって作法が異なりますが、基本的には「納棺後の柩(ひつぎ)自体を時計回りに3周回す」、あるいは「柩の周りを参列者が回る」のいずれかの方法が取られるのが一般的です。
故人が目を回して戻る家を見失わせることで、成仏を促すという風習といわれています。
また「茶碗割」は、故人が生前愛用していた茶碗を割ることで、故人に対して「あなたの居場所はありません」という意思表示をするための風習といわれています。
いずれのしきたりも基本的には出棺時に行われる儀式ですが、近年では見かけることも少なくなっているようです。
福岡県ならではの葬送習慣
地域ごとの地理的要因や歴史的な理由から文化習俗は異なるため、葬儀のしきたりにも地域ならではの事情が多分に含まれています。
その点では福岡県も同様で、特徴的な葬送習慣がいくつか残されているようです。
お祭り中は法被姿が正装
福岡三大祭りの一つ「博多祗園山笠(はかたぎおんやまがさ)」で有名な福岡市博多区では、祭の期間中に限り久留米絣(くるめがすり)の長法被姿が冠婚葬祭の正装として扱われます。
そのため葬儀に参列する際にも、この長法被の着用が許されているようです。
また「博多祗園山笠」は櫛田神社の奉納祭であるため、死の穢れが神社に影響を及ぼさないための配慮から、故人を乗せた霊柩車は櫛田神社の前を通らないとする習慣があります。
読経中は焼香を控える
通夜・葬儀中のお焼香は僧侶が読経する中で行われるのが一般的ですが、福岡県では宗派によって僧侶退場後に行われるケースもあるようです。
一部地域では通夜式でお焼香を行わないこともあるようで、他県から参列された方に驚かれることもあるとのこと。
しかし文化習俗には、その土地の歴史的な背景や地理的な要因が深く関係していますので、「郷に入れば郷に従う」の考えで臨むべきでしょう。
出棺前に食べる「お斎(おとき)」
葬儀・告別式後に供される食事「精進落とし(しょうじんおとし)」のことを、地域によっては「お斎(おとき)」と呼ぶことがあります。
しかし福岡県の福岡市や糸島市周辺地域では、出棺前に故人と共にする最後の食事を「お斎」と呼んでいるようです。
同様の習慣は「出立の膳(いでたちのぜん)」と呼ばれ、西日本を中心とした地域で広く行われています。
かつて土葬が主流だった時代において葬儀はすべて手作業だったため、食い別れの儀式である「お斎」には、出棺前に力をつけるための食事という意味もあったようです。
柳川市周辺地域では「お斎」の際に冷酒が出されることもあるようですが、故人との別れに際して飲むお酒は「別れの盃(さかずき)」と呼ばれ、各地に同様の習慣が残されています。
地域によって異なる福岡県の葬儀にまつわる風習
北九州・福岡・筑後・筑豊の各エリアは、主要な産業や地域特性が異なるため、各エリアで文化習俗にも違いがみられます。
そのため葬儀にまつわるしきたりにも、地域ごとに特徴があるようです。
筑後地方では前火葬(まえかそう)の地域も
福岡県における葬儀の流れは、通夜式→葬儀・告別式→火葬が一般的ですが、筑後地方の久留米市周辺では葬儀前に荼毘に付す「前火葬(まえかそう)」で行われることもあるようです。
「前火葬」の場合、葬儀は遺骨を安置して行う「骨葬(こつそう)」となりますので、葬儀から参加した方は故人の顔を拝めません。
顔を合わせてからお別れしたい場合は、事前に火葬のタイミングを確認しておく必要があります。
湯灌(ゆかん)は女性のみで
福岡県の葬儀では、納棺前に故人の体を洗い清める「湯灌(ゆかん)」を行うケースが、他県に比べて多いようです。
かつては親族の女性が担当することが多かった「湯灌」ですが、現在は葬儀社スタッフや納棺師が行います。
病院などの医療機関で亡くなった場合は、死後処置として全身清拭を含めた「エンゼルケア」が行われるため、省略されることも多かった「湯灌」ですが、福岡県ではしっかりと受け継がれてきたようです。
丑の日は葬儀を控える
全国的には「友引」の葬儀を避ける傾向が強いですが、福岡県の大牟田市周辺では「丑の日(うしのひ)」にも葬儀を控えるようです。
牛は歩みが遅いイメージから「不幸が長引く」「四十九日までに浄土にたどり着かない」と考えられ、避けるようになったといわれています。
枕団子を急いで作る
筑豊地方の直方市周辺地域では、訃報を受けてすぐに「枕団子」を作るというしきたりがあります。
かつては善光寺参りをしないと成仏できないという俗信があったため、亡くなった方がすぐに善光寺に向かえるよう、お弁当として「枕団子」を急いで用意したようです。
江戸時代までの庶民にとって「遠くとも一度は参れ善光寺」は常識であり、生前に一度でも善光寺参りをすれば極楽浄土への往生が約束されるとされていました。
そのため善光寺参りをしていない方が亡くなった場合は、とにかく急いで「枕飯(まくらめし)」や「枕団子」を用意したようです。
おわりに
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