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徳島県の葬儀における作法としきたり

徳島県の葬儀しきたり

四国八十八ヶ所霊場のうち24ヵ寺がある徳島県は、全国でもっとも真言宗信徒が多い地域といわれており、仏事を大切にするという特徴があります。
かつて「四国辺地(へんち:僻地のこと)」と呼ばれるほど、中央と隔絶された地域であったこともあり、徳島県でも独自の文化が育まれてきたようです。

こういった事情から、徳島県の葬儀にまつわる習慣には、伝統的な仏教の影響が強いものや、地域独特のものが少なくありません。
そこで本記事では、徳島県の葬儀におけるしきたりについて、詳しく紹介します。

伝統的な葬儀のしきたりが残る徳島県

現在の日本では、核家族化などの影響から葬儀の小規模化や簡素化が進み、各地で受け継がれてきた葬儀に関する風習も消えつつあります。
しかし徳島県では、伝統的な葬送習慣が今も大切に受け継がれているようです。

死後24時間は生きている?

安置

故人を安置する際は、お釈迦様が入寂されたときの姿勢に倣い、北枕にするのが一般的です。
しかし徳島県では、死後24時間経過するまでは「生きた状態」として扱う習慣があるため、東枕や南枕にして安置します。

そして亡くなってから丸一日経ってから、通常通りの北枕に安置しなおす「枕がえし」を行います。
故人を一定期間病人として扱う風習はいくつかの地域に残されており、枕経が関係しているといわれています。

現在では亡くなってから行われる枕経ですが、もともとは危篤状態の病人の枕元で行われる儀式でした。
枕経に対する考え方は宗派によって異なりますが、基本的には心安らかに浄土に旅立てるように読経するようです。

こういった事情から、枕経をあげてもらうまでは生者として扱い、枕経が済んでから死者として北枕に安置しなおす風習が生まれたようです。

通夜式への参列は平服を着用

島根県には、通夜式に喪服を着用せず、平服で参列するのが作法とされている地域があります。

現在では喪服で通夜式に参列する方も増えていますが、かつてはマナー違反と考えられていました。
亡くなってすぐの通夜式に喪服で参列するのは、故人の死を待っていたようで失礼と捉えられていたようです。

しかし交通手段が発達した現在では、喪服に着替えてからでも通夜式に間に合うため、こういった考えは過去のものになりつつあります。

講組が葬儀を手伝う

講

島根県の郊外などでは、近隣の10軒ほどを一組とする「講組(こうぐみ)」が、葬儀の手伝いを行う習慣が残されています。

かつては全国各地に「隣組(となりぐみ)」や「隣保班(りんぽはん)」などと呼ばれる集まりがあり、近隣住民の相互扶助組織として機能していました。
近所で不幸があれば「隣組」の人々が葬儀を手伝っていましたが、現在では行われていない地域も多くなっています。

しかし島根県の山間部や農村部などでは、葬儀があれば「講組」が手伝うのが当たり前で、仕事よりも優先すべきという地域もあるといわれています。
そのため他県から転入してきた方は、地域の結びつきの強さに困惑することもあるようです。

霊柩車と一緒に「野辺送り(のべおくり)」

出棺

島根県南部の沿岸地域や農村部では、現在でも「野辺送り(のべおくり)」を行う地域があります。

かつて土葬が行われていた時代は、導師や遺族・親族・近隣住民が葬列を組んで、棺を埋葬地まで運ぶ「野辺送り」が行われていました。
しかし亡くなる方のほとんどが火葬される現在では、多くの地域で姿を消しています。

島根県で行われている「野辺送り」も、霊柩車までの短い距離で行う、あるいはゆっくり走る霊柩車に葬列がついて歩くといった形式に変化しているようです。
しかし、伝統的な葬送習慣を残したいという地域の方々の思いが感じられます。

茶碗割(ちゃわんわり)と送り火

仏式の葬儀で広く行われている風習に、出棺時の「茶碗割(ちゃわんわり)」「送り火」の儀式がありますが、徳島県でも同様に実施されています。

「茶碗割」は、出棺の際に故人愛用の茶碗を割るという儀式で「故人が迷わず成仏できるように、現世への未練を断つ」という意味合いのあるしきたりといわれています。
また「送り火」は、浄土へ旅立つ故人の足元を、明るく照らす灯明としての役割があるようです。

放生(ほうじょう)

放生

徳島県の葬儀では、一度とらえた魚や鳩などを解き放つ「放生(ほうじょう)」の儀式が行われています。

この風習は、殺生を戒める仏教の「放生会(ほうじょうえ)」が由来の儀式で、とらえた生き物を殺さずに解き放つことで、故人の功徳を積めるとの考えから行われているようです。

徳島県独特の葬送習慣

全国各地には、地域独自のさまざまな葬儀のしきたりが存在しますが、徳島県にも独特の習慣が残されています。
ここでは、他の地域ではあまり見かけることのない、徳島県の葬送習慣を紹介します。

副葬品にハサミと針

徳島県では棺に納める副葬品として、裁縫道具のハサミと針を入れる習慣があります。
あの世で裁縫の際に困らないように入れられるとのことですが、他地域では見かけることのない珍しい風習といえるでしょう。

しかし近年では、火葬の際に金属を入れることは禁じられているため、行われることも少なくなっているようです。

葬儀でも阿波踊り

阿波踊り

徳島県の伝統芸能「阿波踊り」は全国的に有名ですが、葬儀の際にも踊られることがあるようです。
「阿波踊り」は、徳島城下で踊られた盆踊りが元となっているという説もあることから、追善供養の意味があるのかもしれません。

竹の馬をまたいでお浄め

全国的に「お浄め」といえば、帰宅時に塩を体に振りかけるのが一般的な方法ですが、徳島県では竹で作られた小さな馬をまたぐ習慣があります。
お浄めのしきたりには「豆腐をたべる」「塩を踏む」「鰹節を食べる」などがありますが、馬をまたぐのは徳島県ぐらいかもしれません。

お六日の法要

法要

葬儀後に行う最初の忌日法要である「初七日法要」は全国的に行われていますが、徳島県では前日に「お六日法要」が行われていました。

本来の「お六日法要」は故人の成仏を願って現世への未練を断つための儀式だったようで、追善供養の「初七日法要」とは別に行われていたようです。
しかし「繰り上げ初七日」が一般化した現在では、葬儀当日に一緒に行われるケースが多くなっています。

徳島県の葬儀にまつわる食文化

各地の葬送習慣には、食にまつわるものが少なくありませんが、徳島県の葬送習慣にも食に関係したものがいくつか存在します。
その中でも特徴的なものを、いくつか紹介します。

通夜に振る舞われるきつねうどん

きつねうどん

徳島県の通夜は、遺族と近親者を中心に行われますが、駆けつけてくれた親族に「うどん」を振る舞う習慣があります。
遺族の負担を軽くするために、準備や片付けが容易な「きつねうどん」が多く選ばれているようです。

「うどん」といえば隣接する香川県が有名ですが、不思議なことに香川県の葬儀で「うどん」が振る舞われるケースは、さほど多くないといわれています。

通夜翌朝に食べる「送り飯(おくりめし)」

島根県では、通夜が明けた朝に遺族や親族が揃って食事をとる「送り飯(おくりめし)」という儀式が行われます。

四国では全般的に、通夜のあいだは故人を布団に安置し、夜が明けてから納棺を行うことが多いようです。
この納棺や葬儀を滞りなく営むために、遺族や親族に力を付けさせるといった目的で行われているという説もあります。

「まな板直し」と「49個の餅」

餅

葬儀後に振る舞われる食事は「精進落とし(しょうじんおとし)」や「お斎(おとき)」などと呼ばれることが多いですが、徳島県では「まな板直し」と呼ばれています。
かつて身内を亡くした遺族は忌明けまで肉や魚を断ったため、その間にまな板を削って直していたことが、この名称の由来のようです。

「まな板直し」の際には、「お六日法要」で供えられた49個の餅を参列者で分け合って食べるのが通例となっています。

おわりに

葬儀社様ホームページのコラムとしてこのような記事の掲載をおこなっておくと、喪主様・ご遺族様・ご参列の方々も分かりやすく、興味を持たれる内容かもしれません。

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