葬儀業界における広告宣伝費まとめ|急成長中の葬祭事業4社のデータをもとに解説
多死社会がピークを迎えるとされる2040年に向けて、さまざまな業界からの新規参入が相次いでいる葬儀業界では、各社とも顧客獲得が大きな課題となっています。
集客に苦しむ葬儀社様の中には、高額な手数料を負担してでも葬儀ポータルサイトに依存せざるを得ない状況に陥っているところも少なくないようです。
しかし、そんな厳しい状況の葬儀業界においても、急速に業績を伸ばしている専門葬儀社様が存在します。
確実に店舗数を増やしながらも、効率的な集客に成功している葬儀社様では、これまでの葬儀業界とは異なった広報戦略を取っているようです。
そこで本記事では、代表的な4社の広告宣伝費をはじめとしたデータをもとに、効果的な集客方法について解説します。
集客に悩みを抱えている葬儀社様にとっても、今後に向けて有益な情報になるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
売上を急速に伸ばしている葬儀社様の広告宣伝費
これまでの葬儀業界において、売上高に占める広告宣伝費の割合は、おおむね3~5%ほどが一般的でした。
しかし競合ひしめく現在の葬儀業界において、冠婚葬祭互助会を脅かす勢いで業績を伸ばしている企業は、広告宣伝費に対する考えが従来とは大きく異なるようです。
葬儀業界で急激に業績を伸ばしている専門葬儀社としては、以下「株式会社 ティア」「ライフアンドデザイン・グループ株式会社」「株式会社 金宝堂」「きずなホールディングス」の4社が代表格といえるでしょう。
Web上に公開されている情報をもとに、各社の主要なデータを表にまとめてみました。
なお「ライフアンドデザイン・グループ株式会社」様については、主要葬儀ブランド「らくおうセレモニー」のみのデータのみを抽出しています。
また「株式会社 金宝堂」様については、葬儀事業のみを対象としました。
上記の表を確認すると、一般的な葬儀社に比べ2~3倍の広告宣伝費率になっている点に気が付きます。
この1点だけをとっても、急成長を遂げている葬儀社様が、広報活動をいかに重視しているかがお分かりいただけるでしょう。
このデータから広告宣伝費のみを抽出し、グラフ化すると以下のようになります。
今回紹介した4社の中でも、広告宣伝費率・概算広告宣伝費ともに「家族葬のらくおう」様がもっとも多く、広報活動に力を入れている様子が見てとれます。
また1会館あたりの広告宣伝費は、以下の通りです。
1会館あたりの広告宣伝費でも「家族葬のらくおう」様がトップですが、「小さな森の家」様も同等レベルとなっています。
4社の中で「小さな森の家」様だけはTVCMを利用していない点を考えると、Web広告やチラシといった媒体への力の入れようは、他社を圧倒するレベルといえるでしょう。
金宝堂(小さな森の家)様
https://ososhiki.kinpoudou.co.jp/area/chiba/morinoie/
今回紹介させていただく4社のうち、金宝堂様だけはTVCMを利用していませんが、これは金宝堂様の出店方法と関係していると思われます。
金宝堂様が自社出店している葬儀事業メインブランドの「小さな森の家」は、千葉・埼玉・茨城の3県を中心に展開されています。
この3県における地上波放送は東京都と同じ在京キー局となりますが、東海エリアや関西エリアの準キー局と比較しても、CM放送費が段違いに高額になるようです。
CM放送費は曜日や時間帯によって異なりますが、東海エリア・関西エリアの準キー局でのCM放送費が15秒あたり15~25万円といわれています。
一方、在京キー局では75万円以上が相場といわれており、費用対効果を考えると決して無視できる差ではありません。
また自社での出店に加え、M&Aにより各地の葬儀社を取り込みながら、葬儀事業における店舗数を増やしていますが、グループ各社は東北・東海・北陸・四国・中国の各地方に分散しています。
それぞれテレビ放送のエリアも異なるため、TVCMを放映しても効果は限定的になるでしょう。
こういった事情から、金宝堂様では限られた広告宣伝費をTVCMに割り当てることなく、チラシとWeb広告などに集中投資しているようです。
グループ各社は分散して存在しているものの、チラシの効果を最大限に発揮できるよう、地域単位では集中出店によるドミナント戦略をとられています。
ライフアンドデザイン・グループ(家族葬のらくおう)様
ライフアンドデザイン・グループ様は、葬儀ポータルサイト「小さなお葬式」を運営するユニクエスト傘下企業で、関西地方を中心に葬祭事業を展開しています。
事業の主軸となっているのは、関西地方を中心に「家族葬のらくおう」名義で葬祭サービス事業を展開している「ライフアンドデザイン・グループ西日本 株式会社」です。
「ライフアンドデザイン・グループ西日本」の2022年3月期決算の売上高は約88億円で、ライフアンドデザイン・グループ全体の売上高130億の68%ほどを占めています。
88億円という売上高は、ライフアンドデザイン・グループ全体の前年同期売上高を超えていることから、会社全体の業績を「ライフアンドデザイン・グループ西日本」がけん引している様子がうかがえます。
そんな「ライフアンドデザイン・グループ西日本」は、関西エリアでTVCMを放映していますが、広告の効果を最大化するためにCM放映エリア内での集中出店しているようです。
企業がTVCMを放映する場合、通常は一般認知度の向上を目的とするケースが多いでしょう。
しかし「ライフアンドデザイン・グループ西日本」では、TVCM放映エリアに合わせて出店計画を立てるという、従来とは異なる戦略をとっています。
さらに「ライフアンドデザイン・グループ西日本」では、TVCMだけでなく、チラシや新聞広告・Web広告にも力を注いでいるようです。
特にWeb広告については投資を拡大させており、TVCM・新聞といった「マス広告」の弱点である「ターゲット層への行動訴求」についてもケアしていると考えられます。
こうした点を踏まえると、「ライフアンドデザイン・グループ西日本」は、広報活動を軸に事業を展開していると考えた方がよいかもしれません。
そして業績を見る限り、売上高の13%という破格の広告宣伝費は、有効に働いているようです。
ティア様
ティア様は愛知県名古屋市に本社を置き、愛知・岐阜・三重の東海3県を中心に葬祭事業を展開しています。
葬儀業界で数少ない上場企業の1社であるティア様は、自社およびフランチャイズにより店舗数を飛躍的に増加させている注目企業です。
関東や関西にも事業を拡大させていますが、現在のところ「ティア」名義での葬祭ホール出店は東海3県が大半を占めています。
近畿エリアでは大阪府20店舗・和歌山県1店舗の出店を果たしていますが、関東地方では茨城県1店舗・千葉県1店舗・埼玉県2店舗・神奈川県2店舗にとどまっているようです。
また東京都においては葬祭ホールを出店していないようですが、都内に9ヵ所の「葬儀相談サロン」を設置しています。
数多くの寺院や葬祭ホールと提携していることから、「葬儀相談サロン」で集客し提携斎場で葬儀を施行するという形式をとっているようです。
そんなティア様は、中部エリアおよび関西エリアにおいてTVCMを放映しており、一般認知度の向上に成功しています。
https://www.youtube.com/watch?v=_gFOkVPZSqc
主要商圏である愛知県・岐阜県・三重県は、地上波放送において中部エリアに属しているため、TVCMの効果は3県すべてに及びます。
また大阪府と和歌山県も、地上波放送における準キー局である関西エリアに含まれるため、網羅性の面では申し分ありません。
前述したように、在京キー局にくらべ中部エリア・関西エリアの準キー局のTVCM放送費は安価ですので、費用対効果の高さは関東地方の5倍以上となります。
ティア様では地方中心の事業展開のメリットを活かし、TVCMで一般認知度を上げつつ、チラシや電車の中吊り広告・Web広告などの媒体にも広告宣伝費を投入しているようです。
参照:CMの窓口「テレビCM」
きずなホールディングス様
https://www.famille-kazokusou.com/
きずなホールディングス様では、主要葬儀ブランドの「ファミーユ」名義で、四国を除く日本全域に葬祭ホールを展開されています。
グループ企業として「株式会社ファミーユ(98店舗)」「株式会社 花駒(7店舗)」「株式会社 備前屋(4店舗)を傘下に持つ上場企業です。
きずなホールディングス様では、確認できるだけでも北海道・熊本県・宮崎県および千葉県でTVCMを放映しています。
ただし地域限定放映のようですので、キー局・準キー局ではなく地方独立局を利用している可能性もあります。
他の4社と異なり、きずなホールディングス様では出店地域に偏りがないため、キー局・準キー局でのTVCM放映で、全出店地域をカバーするのは困難です。
そういった事情から、集中的に広報活動を行う地域を限定している可能性もありそうです。
徹底した集中出店により広告宣伝効率の向上に努めた結果、2022年5月決算期では広告宣伝費は増大したものの、葬儀施行数の大幅な増加により前年同期比で増収増益を維持しています。
葬儀業界における広告宣伝費の重要性
かつての葬儀業界では、人の「死」に関わる宗教儀式を取り扱うという事業の特殊性から、広告宣伝を行うべきではないという風潮がありました。
しかし現在の葬儀業界は飽和状態といわれるほど競合が多く、集客のための広報活動は不可欠となっています。
葬儀ポータルサイトの利用は最小限に抑えるべき理由
集客力が十分でない葬儀社様の中には、葬儀ポータルサイトへの依存度が高くなっているケースも見受けられます。
たしかに葬儀ポータルサイトと業務提携すれば、一定の葬儀施行数は維持できるかもしれません。
しかし実際のところ、葬儀ポータルサイトからの紹介案件は相場より低い価格が設定されているうえに、売上の30%ともいわれる高率な紹介手数料も発生します。
そういった状況下で利益を確保するためには、葬儀に使用する葬具の品質を下げる、あるいは無理な人件費の圧縮などの経費削減が必要となります。
上記のような状況で葬祭事業を続けた場合、当然ながら顧客満足度の低下を招き、地域での評判も悪くなる可能性が高いでしょう。
その結果ますます集客が困難になり、さらに葬儀ポータルサイトへの依存度が高まるという悪循環に陥りかねません。
こういった事態を避けるためには、葬儀ポータルサイトを利用しなくても、経営が維持できるだけの集客力が必要です。
そのためには、自社の魅力をアピールするための広報活動が重要なポイントとなりますが、広告宣伝費に投入できる資金は葬儀社様ごとに異なります。
限られた資金を有効活用するためにも、広告宣伝方法に関する情報の収集をおすすめします。
利益確保のためには早めの対策が不可欠
言うまでもないことですが、葬祭事業者は営利企業ですので、利益を追求するのは当然のことです。
しかし地域密着型の良心的な葬祭事業経営者様の中には、利用者に対する思いやりの気持ちが強すぎるがゆえに、利益追求を後回しにしているケースが散見されます。
良心的な葬儀社様は地域での評判も良いため、かつての競合が少ない葬儀業界であれば、収益は少なくても事業の継続は可能だったかもしれません。
しかし競合ひしめく現在の葬儀業界で生き残るためには、顧客満足度を向上させつつ利益を確保する経営が求められます。
利益確保に向けた集客のための広報活動を実施する場合、どんなに優れた広告宣伝方法でも、実感できるほどの効果が表れるまでには一定の時間が必要です。
「窮すれば鈍する」という言葉もあるように、経営が苦しい状況では判断力も低下しますので、早めの対策をおすすめします。
葬儀業界において効果が期待できる集客方法
かつては大手冠婚葬祭互助会の寡占状態だった葬儀業界ですが、超高齢化による多死社会に向けて新規参入が相次ぎ、葬儀社様の企業規模も多岐にわたります。
葬儀業界における広告宣伝費率は3~5%ほどが理想という意見もありますが、広告宣伝費として投入できる金額も葬儀社様ごとに異なるでしょう。
しかし現在では多様な広告宣伝方法が存在するため、自社の状況に合わせた選択が可能となっています。
TVCM
TVCMは不特定多数のテレビ視聴者の目に触れるため、自社に対する一般認知度の向上に効果的な公告方法といえます。
今回紹介した急成長葬儀社4社のうち3社も利用しており、急速な業績向上に寄与しているようです。
しかし前述したようにTVCMの放映には高額な費用負担が発生するため、費用対効果を考えると、同一放送エリア内への集中出店が必須条件となります。
葬儀1件あたりの受注コストが高くなりすぎるため、所有葬祭ホールが10店舗以下の葬儀社様においては、現実的ではない広報手段といえるでしょう。
チラシ
「ダイレクトマーケティング」の代表格であるチラシの配布方法としては、新聞折込とポスティングがあげられます。
新聞の発行部数は減少傾向にありますが、地方在住の高齢者層では比較的購読率が高く、地域によっては9割以上の世帯で購読されているともいわれています。
新聞折込では購読者にくまなくチラシが配布されるため、購読率が高い地域では効果的な広報手段の1つといえるでしょう。
参照:Shufoo!「新聞購読率ってどのくらい?購読者像を「年代」と「地域」から分析【2021年版】」
一方のポスティングは、ターゲット層に絞った効率的な配布も可能ですし、新聞を購読していない家庭にもアプローチできます。
チラシ1枚当たりの配布コストは新聞に比べ若干高くなりますが、配布地域を限定するなどすればコストカットも可能です。
非常にアナログな印象のチラシですが、高齢者層が大多数を占める地域などでは、想像以上に効果を発揮します。
なにより物理的に利用者の手元に残る点は大きな強みで、利用者の行動を促すうえではTVCM以上に効果的な方法です。
Web広告
Web広告とはインターネットを通じて配信される広告全般を指す言葉で、WebサイトやSNSを利用した広告は、すべてWeb広告に含まれます。
テレビや新聞を利用した従来型「マス広告」には、以下のような弱点がありました。
- 正確な効果測定が難しい
- 費用が高額
- 詳細なターゲット設定を反映しにくい
上記のような「マス広告」の弱点を克服したWeb広告の需要は高まり続けており、2021年にはマスコミ四媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の合計広告費を上回っています。
すでに葬儀業界でも、さまざまなWeb広告が利用されていますが、目的によって使い分ける必要があります。
ここでは受注に直結する可能性が高い2種類を紹介します。
リスティング広告
リスティング広告は「検索連動型広告」とも呼ばれ、検索キーワードに適合した広告がページトップに表示される仕組みです。
利用意向が高い層にアピールできるため、通常よりも訴求効果が期待できる広告といえます。
リスティング広告は有料サービスとなりますが、基本的に広告がクリックされた数だけ費用が発生するシステムなので、高い費用対効果が期待できます。
ただし1クリックあたりの価格はオークションで決まりますので、検索回数の多いキーワードは高額になるケースも多いようです。
また人気のあるキーワードは大手企業に独占されていて、利用できないこともあります。
Googleビジネスプロフィール
近年MEO(ローカルSEO)対策として注目を集めているのが、googleビジネスプロフィールです。
googleビジネスプロフィールを利用すれば、実店舗情報をアピールできるだけでなく、利用者からの問い合わせも受けられます。
情報収集にあたり多くの方が利用するgoogle検索ですが、現在では自動的に位置情報を加味した結果が表示されます。
例えばスマートフォンで「葬儀社」と検索すると、現在地にもとづいて近隣の葬儀社の情報が表示されるはずです。
最上位にはリスティング広告が表示されますが、そのすぐ下にはgoogleマップと連動した情報が表示されます。
実はgoogleビジネスプロフィールを利用していない場合でも、店舗情報は自動的に掲載されますが、情報が管理されていないため不正確な内容になってしまうケースもあるようです。
しかしgoogleビジネスプロフィールで正確な情報を登録しておけば、利用者様と企業をつなげる強力なツールとなります。
さらに写真や口コミといった店舗情報を充実させれば、検索順位を上げることも可能です。
google検索やgoogleマップでトップ画面に表示される上位3件に入れば、利用者様からの問い合わせにつながる可能性も高くなります。
キーワード検索を行う場合、該当サービスの利用意向が高いと考えられますので、可能な限り上位表示されるよう力を注ぐべきでしょう。
ホームページ制作・改修
現在では葬儀社様のほとんどが公式ホームページを設置されていますが、製作したまま長期間にわたり手付かずというケースも少なくありません。
広報活動の結果、利用者様がせっかくホームページを訪問していただいても、使い勝手が悪ければ離脱されてしまいます。
ホームページのデザインにもトレンドがあり、機能的にも日進月歩で進化しているため、定期的な改修は不可欠です。
現在のホームページはWebマーケティング戦略の要(かなめ)ともいえる存在になっており、社内に専門部署を設置して時流の変化に対応している企業も少なくありません。
もし10年以上前に製作したままホームページを運用している場合は、時代に合ったホームページへの改修を強くおすすめします。
まとめ
今回は、急成長を遂げている葬祭4社のデータに基づき、葬儀業界における広報活動や広告宣伝費について解説しました。
今後の葬儀事業運営において、集客力の向上のための広報活動の重要性が、お伝えできていれば幸いです。
葬儀社以外の競合としては、集客と斡旋のみを行う葬儀ポータルサイトがあげられますが、収益の中心は葬儀社からの紹介手数料です。
集客力が事業の生命線となる葬儀ポータルサイトの動向は、自社集客数の向上を目指す葬儀社様にとって参考になる部分も多いでしょう。
また今回ご紹介している4社のように、コロナ禍の中でも業績を伸ばし続けている葬儀社様の広告宣伝手法を知ることは、葬祭各社様が広報戦略を策定するうえで非常に重要です。
しかし葬儀社様ごとに企業規模や資金力に差があるため、それぞれに適した広報手段も異なります。
であれば、広告方法にはどういったものがあるのかを知り、自社に適した手法を模索すべきでしょう。
葬儀屋.jpでは、ホームページの制作・リニューアルだけでなく、葬儀社様のお困りごとに幅広く対応しております。
集客サポートも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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