神奈川県の葬儀における作法としきたり
横浜市・川崎市・相模原市と3か所の政令指定都市を持つ神奈川県は、東京都・大阪府に次いで人口密度の高い県となっています。
東京都と接する県東部が高度に都市化されている一方、山梨県や静岡県と接する地域には豊かな自然が残されており、県内でも東部と西部で生活環境が大きく異なるのが特徴です。
人口密集地の横浜市や川崎市・相模原市南部では、古くからの文化風習は失われつつありますが、農村部では古き良き時代の日本の情景を垣間見ることができます。
こういった事情から、伝統的な葬送習慣が残されている地域も、郊外に集中しています。
また人口密集地に目を向けると、火葬施設の不足から火葬までの待機期間が長期化傾向にあるようです。
そこで今回は、神奈川県における葬儀の流れや葬送習慣、火葬事情について紹介します。
もくじ
神奈川県の一般的な葬儀の流れ
神奈川県の葬儀は、関東地方の標準的な式次第で営まれるケースがほとんどです。特に横浜市は都市化が進んでいるため、独特な葬送習慣などもみられません。
かつては神奈川県各地にも伝統的な葬送習慣がありましたが、時代が移るとともに徐々に失われてしまったようです。
一般参列者は通夜式への参列が主流
首都圏を中心とした都市部では、一般弔問客は日中に行われる葬儀よりも、夕刻からの通夜式に参列するケースが多くなっていますが、この傾向は神奈川県にも当てはまります。
都市部では住民のほとんどが企業に勤めている状況ですので、勤務終了後に参列できる通夜式に一般弔問客が集中するのは、きわめて自然な流れといえるでしょう。
現在では日本各地の都市部でも同様の傾向がみられることから、全国的な葬儀のスタンダードになる可能性も否定できません。
関東地方での「通夜振る舞い(つやぶるまい)」のマナー
通夜式後に行われる会食を「通夜振る舞い(つやぶるまい)」といいますが、西日本と東日本ではしきたりに違いがみられます。
西日本の「通夜振る舞い」は遺族と親族が中心ですが、東日本では全員参加が一般的です。
神奈川県でも、特段の事情がない限り「通夜振る舞い」に参加するのが通例となっており、1口だけでも箸をつけるのがマナーとされています。
葬儀に関わる食事には、故人への供養としての側面がありますので、可能な限り参加したほうがよいでしょう。
出棺は葬儀・告別式後
火葬が主流になって以降、出棺後に火葬場まで同行するのは遺族と親族のみというケースが一般的ですが、神奈川県も同様です。
葬儀・告別式後に出棺され、火葬終了後には遺族や親族によって収骨が行われます。
関東地方では、遺骨の全てを骨壷に納める「全収骨(ぜんしゅうこつ)」が通例となっていますが、横浜市では「斎場を使用した者は、焼骨を引き取らなければならない。」と、横浜市斎場条例に定められています。
神奈川県郊外に今も残される葬送習慣
神奈川県における葬儀は、全般的に標準的な形式で行われるケースが多いですが、郊外の農村部などでは古くからのしきたりが受け継がれている地域があります。
地域によっては火葬のタイミングが異なる場合もありますので、神奈川県の葬儀に参列する際は注意が必要です。
小田原市・南足柄市の一部では「前火葬(まえかそう)」
神奈川県西部に位置する小田原市や足柄地域の一部では、葬儀の前に火葬を行う「前火葬(まえかそう)」の習慣があります。
「前火葬」の地域では、祭壇に遺骨を安置して行う「骨葬(こつそう)」になるため、故人の顔を拝めません。
最後に顔を合わせてお別れしたい場合は、事前に火葬のタイミングを確認しておく必要があります。
長寿を全うされた方の葬儀は特別
神奈川県の農村部では、80歳以上の長寿を全うされた方の葬儀で、5円玉とキャラメルなどのお菓子を配る習慣があります。
また火葬中はお赤飯を食べるしきたりも残されており、悲しみの中にも故人の長寿を祝う意味合いがあるようです。
長生きされた方の葬儀で小銭を配る風習は「長寿銭(ちょうじゅせん)」と呼ばれ、持ち帰ることで長生きできるといわれています。
「長寿銭」の風習は今でも日本各地に残されており、かつては広く行われていた葬送習慣のようです。
またキャラメルを配るのも、やはり長寿を祝う葬送習慣の「花籠振り(はなかごふり)」や「撒き銭(まきせん)」の名残(なごり)と考えられます。
かつて土葬が主流だった時代は、遺族や親族・近隣住民が葬列を組んで棺を墓地まで運ぶ「野辺の送り」を行うのが一般的でした。
「撒き銭」「花籠振り」は「野辺の送り」の際行われる葬送習慣で、お菓子や小銭を目の粗い籠に入れたものを竹竿の先に付け、道中で籠を振りながら撒いて歩くのが習わしです。
こういったしきたりは、故人の財産を他人に施す「浄財(じょうざい)」の意味をもつという説もあります。
遺族が故人に代わって功徳を積み、あの世で故人が優遇されることを祈る、遺族の思いがこもった風習です。
納棺時に食べる豆腐
神奈川県の大和市周辺では、故人を納棺する際に1丁の豆腐を全員で回して食べるしきたりが残されています。
すべて食べきるのが作法とされているため、最後の方は残さず食べなければなりません。
古来より日本では「白」を清浄な色とする考えがあり、魔や穢れ(けがれ)を祓う力があると信じられてきました。
そのため葬儀の際に白い食べ物を口にする風習が各地に残されており、豆腐を食べる習慣もその一つと考えられます。
現在では、通夜・葬儀から帰宅する際に塩を体に振りかける「お浄め」が行われていますが、これも塩の「白さ」にもとづく習慣という説もあるようです。
都市部では火葬まで1週間近くかかることも
首都圏の都市部では全般的に火葬施設が不足しているため、神奈川県でも横浜市や川崎市などの人口密集地では、火葬までに時間がかかるケースも少なくありません。
人口密度が高い地域では火葬施設を新設するのも困難なため、実質的に問題解消にいたっていないのが実情のようです。
人口に対して火葬場が少ない
全国の政令指定都市の中で、神奈川県の川崎市(10,774.62)や横浜市(同:8,623.86)は、大阪市(人口密度:12,208.03)に次いで人口密度の高い地域です。
しかし、地域内に設置されている火葬施設は想像以上に少なく、人口10万人当たりの火葬場数は、東京23区に匹敵する状況です。
全国でもっとも人口密度が高い大阪市でも、10万人当たりの火葬場数は0.21ヵ所ですので、横浜市・川崎市の火葬事情がいかにひっ迫しているかが理解できます。
神奈川県の火葬費用
神奈川県の都市部では、東京都と同レベルで火葬場が少なくなっていますが、火葬費用については東京都ほど負担額が高くありません。
また公営斎場も、横浜市に4カ所・川崎市に2カ所が用意されており、民営斎場は横浜市に1か所・逗子市に1カ所のみです。
神奈川県内の火葬費用は以下の通りです。
住所地での火葬であれば、県内全域でおおむね1万円前後となっており、もっとも高額な横浜市でも12,000円となっています。
また民営の火葬場でも5万円ほどですので、東京23区内と比較すれば費用負担は極端に高額ではありません。
横浜市・逗子市では民間火葬場も稼働
神奈川県内では多くの市や町に公営火葬場が設けられ、単独の自治体で火葬施設を設置できない地域でも共同運営という形式で用意されています。
しかし逗子市・鎌倉市・葉山町には公営火葬場がなく、共同運営にも参画していないため、多くの方が逗子市の民営火葬場「誠行社 小坪斎場」を利用しているようです。
そのため民営火葬場にもかかわらず、当該地域の住民と他地域の住民で異なる火葬費用が設定されています。
また横浜市では、4カ所に設置されている公営斎場では順番待ちが発生することもあるため、民営火葬場の「西寺尾会堂」を利用する方も多いようです。
ただし、横浜市民が「西寺尾会堂」を利用した場合は、市から16,000円が補助されるため、実質的な費用負担は40,000円となっています。
おわりに
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