葬儀業界の人材課題を解決する|採用難・離職率の原因とエンゲージメントの基本

「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用できても、数ヶ月で辞めてしまう」
葬儀業界で働く方なら、こうした悩みを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ハローワークへの掲載、給与アップ、福利厚生の充実など、あらゆる手を尽くしても、なかなか人材が定着しません。これは多くの葬儀社が直面している現実です。
では、なぜ葬儀業界は人が集まりにくく、定着しにくいのでしょうか。
「給与が低いから」と思われがちですが、実はそれだけが原因ではありません。データを見ると、葬儀業界の給与水準は世間のイメージほど低くはないのです。にもかかわらず人が辞めていく背景には、もっと根本的な問題が隠れています。
この記事では、葬儀業界の採用・定着問題について、3つの視点から解説していきます。
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「うちの会社は何が問題なんだろう?」「どこから手をつければいいんだろう?」とお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
もくじ
人が集まらない理由|なぜ葬儀社の採用は難しい?

葬儀業界は、採用が非常に難しい業界のひとつです。
有料求人媒体への出稿、雇用条件の改善、ハローワークでの募集など、さまざまな手を打っても成果が出ないという声をよく聞きます。これは特定の会社だけの問題ではなく、業界全体に共通する構造的な課題です。
では、なぜ葬儀業界には人が集まりにくいのでしょうか。その背景を、給与・待遇のデータから読み解いていきます。
集まらない理由①:全業種平均を下回る給与水準
「葬儀業界は給与が低い」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。実際のところ、どうなのでしょうか。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、葬儀業界の平均年収は約396万円です。平均年齢は43.1歳、月額給与は約28.9万円、年間賞与は約49.2万円となっています。

出典:職業情報提供サイト(job tag)「葬祭ディレクター」
この数字を見て、「思ったより低くない」と感じた方もいるかもしれません。世間で言われているほど極端に低い水準ではないのです。
しかし、全業種の平均年収は約460万円です。葬儀業界はこれを約64万円下回っています。年間で64万円、月に換算すると約5万円の差があります。
求職者が複数の業界を比較したとき、この差は無視できません。「同じくらいの仕事量なら、給与が高い方を選ぼう」と考えるのは自然なことです。
葬儀業界の給与水準は、決して「極端に低い」わけではありません。しかし、他の業界と比べると見劣りしてしまうのが現実です。これが、求職者が集まりにくい理由のひとつになっています。
集まらない理由②:大手と中小の格差が大きい
葬儀業界の給与は、会社の規模によって大きな差があります。
厚生労働省の統計によると、従業員1,000人以上の大手企業では平均年収が約410万円であるのに対し、従業員10〜99人の中小企業では約387万円にとどまります。その差は約23万円です。

さらに、上場している大手葬儀社になると、この差はもっと広がります。

出典:燦ホールディングス株式会社|有価証券報告書
平安レイサービス株式会社|有価証券報告書
株式会社ティア|有価証券報告書
燦ホールディングスは、葬祭業として初めて株式上場を果たした業界最大手です。2024年には同業のきずなホールディングスとの経営統合を発表し、全国267の葬祭施設を展開する規模となりました。こうした大手では平均年収が500万円〜800万円台に達しています。
地域による差も見逃せません。都市部と地方では月収で8万円以上の開きがあるとも言われています。東京都内で勤務する場合は月の手取りが23〜24万円ほどになりますが、地方ではそれを下回ることもあります。
求職者の立場で考えると、同じ葬儀の仕事をするなら待遇の良い大手を選びたいと思うのは自然なことです。中小葬儀社が大手と同じ土俵で採用競争をするのは、なかなか難しいのが現実です。
集まらない理由③:キャリアアップの道筋が見えにくい
葬儀業界の給与は、勤続年数が長いほど上がる傾向にあります。経験豊富な葬祭ディレクターや管理職クラスになると、年収600万円を超えるケースも珍しくありません。
一方で、新人の場合は月給23万円前後からのスタートが一般的で、年収は300万円台前半にとどまります。

夜勤手当や休日出勤手当といった各種手当が充実している企業も多いのですが、こうした情報が求職者にきちんと届いているかというと、必ずしもそうとは言えません。
「長く働けば収入は上がる」という事実があっても、入社前の段階では新人とベテランの給与差しか目に入らないものです。その差をどう埋めていけるのかが伝わらなければ、求職者には「将来性が見えにくい業界」と映ってしまいます。
人が定着しない理由|離職率が高い原因は?

葬儀業界では「採用できても、すぐに辞めてしまう」といった悩みを抱える経営者が少なくありません。
厚生労働省の統計によると、葬儀業を含む「生活関連サービス業・娯楽業」は離職率が高い業種のひとつです。せっかく人材を採用しても、数ヶ月で退職してしまうケースも珍しくありません。
人が定着しない背景には、業界特有の労働環境や、組織としての構造的な課題があります。ここでは離職率のデータをもとに、人が辞めてしまう理由を掘り下げていきます。
定着しない理由①:離職率が高い業界構造がある
厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、一般労働者の離職率は全業種平均で11.5%です。これに対し、葬儀業を含む「生活関連サービス業・娯楽業」の離職率は16.9%と、平均を大きく上回っています。

また、「令和6年賃金構造基本統計調査」では、生活関連サービス業・娯楽業の平均勤続年数は10.8年で、全産業平均の12.4年を下回っています。人材の入れ替わりが激しい業界であることがデータからも読み取れます。

これらの業界に共通するのは、人と接するサービスが中心であり、精神的・肉体的な負担が大きいことです。葬儀業界も例外ではなく、ご遺族の悲しみに寄り添いながら不規則な勤務をこなす仕事の特性が、離職率の高さに影響していると考えられます。
定着しない理由②:人を育てる仕組みが整っていない

葬儀業界には、「見て覚える」という育成文化が根強く残っています。
「先輩の動きを見て技術を盗む」という教育方針は、職人の世界では当たり前のことかもしれません。しかし、体系的な研修や教育プログラムが整備されていなければ、新人は何をどう学べばいいのかわからないまま現場に放り出されることになります。
ご遺族の前でミスは許されないというプレッシャーの中、十分な準備もないまま対応を求められる状況が、入社後まもない離職につながっているケースは少なくありません。
また、業界全体として女性の活躍が遅れている点も見逃せません。葬儀業界で働く女性は増えていますが、管理職やリーダーとして活躍する人はまだ限られています。キャリアのロールモデルが少なければ、長く働き続けるイメージを持ちにくいのも無理はありません。
標準化されたマニュアルや研修制度を整えている葬儀社もありますが、業界全体で見ればまだ少数派です。人を育てる仕組みが整っていないことが、人材の定着を難しくしている大きな要因のひとつと言えるでしょう。
定着しない理由③:2025年問題で人材不足が加速する
2025年問題とは、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となることで、医療・介護の需要が急増し、社会保障費の増大や労働力不足が深刻化するとされる問題です。医療や介護の分野で語られることが多いですが、葬儀業界にとっても深刻な課題をもたらします。
国の推計によると、死亡者数は2040年まで増加し続け、ピーク時には年間約170万人に達すると見込まれています。葬儀件数が増えるということは、当然それだけの人手が必要になります。
しかし、現実はどうでしょうか。葬儀の仕事は24時間体制での対応が求められ、夜間の呼び出しや突発的な業務が日常的に発生します。感情的な負担が大きいうえに労働時間も長く、休暇が取りにくいという環境が、若い世代の参入を妨げています。
つまり、葬儀業界は「需要は増えるのに、人が集まらない」という板挟みの状態に置かれているのです。
さらに深刻なのは、日本全体で生産年齢人口が2040年には6,213万人まで減少するという見通しです。働き手そのものが減っていく中で、葬儀業界だけが人材を確保できるはずがありません。医療・介護など他のサービス業との人材獲得競争も激しくなります。
この構造的な人材不足は、一社の努力だけで解決できる問題ではありません。だからこそ、今いる社員が辞めずに働き続けられる環境を整えることが、これまで以上に重要になっています。
葬儀業界における人が辞めない会社のつくり方

ここまで、葬儀業界で採用が難しい理由、そして人が定着しない理由を見てきました。では、どうすれば「辞めない会社」をつくれるのでしょうか。
ここからは、社員のエンゲージメントを高めるための基本的な考え方を紹介します。
給与アップだけでは解決しない理由
「給与を上げれば人は辞めなくなる」と考える経営者は少なくありません。たしかに、待遇改善は社員の不満を減らす効果があります。しかし、給与を上げただけで離職率が下がるかというと、話はそう単純ではありません。
ここで押さえておきたいのが、「従業員満足度(ES)」と「エンゲージメント」の違いです。

従業員満足度とは、給与や福利厚生、労働環境といった「会社から与えられるもの」に対する満足感を指します。これが低いと不満につながりますが、高いからといって社員が主体的に働くようになるわけではありません。
一方、エンゲージメントとは、社員が会社や仕事に対して感じる愛着や貢献意欲のことです。「この会社で働き続けたい」「もっと良い仕事をしたい」という気持ちがエンゲージメントの高さを示しています。
つまり、給与アップは従業員満足度を高める手段にはなりますが、それだけではエンゲージメントは上がりません。人が辞めない会社をつくるには、「不満を減らす」だけでなく、「働きがいを高める」視点が欠かせないのです。
従業員エンゲージメントを高めるとどうなる?
エンゲージメントを高めることは、組織にどのような効果をもたらすのでしょうか。大きく2つのメリットがあります。
まず、定着率の向上です。会社や仕事に愛着を持っている社員は、転職を考える可能性が低くなります。多少の不満があっても「この会社で頑張りたい」という気持ちが勝るからです。結果として、採用や教育にかかるコストの削減にもつながります。
次に、サービス品質・顧客満足度の向上です。エンゲージメントの高い社員は、仕事に対するモチベーションが高く、より良いサービスを提供しようと能動的に取り組みます。指示を待つのではなく、自ら考えて動く姿勢が組織全体の生産性を高め、葬儀の現場ではご遺族への細やかな配慮となって表れます。
「あの葬儀社に頼んで良かった」という評価は、口コミや紹介という形で次の受注につながります。
このように、エンゲージメント向上は「社員のため」だけの取り組みではありません。定着率と顧客満足度という経営の根幹に関わる要素を底上げする、経営戦略そのものと言えます。
従業員エンゲージメントを高める3つのポイント
では、エンゲージメントを高めるには何が必要なのでしょうか。ここでは、葬儀業界で特に意識したい3つのポイントを紹介します。
①まずは管理職からケアする
エンゲージメント向上というと、現場スタッフへの働きかけを考えがちです。しかし、最初に目を向けるべきは管理職です。
管理職は、経営層の方針を現場に伝え、スタッフの育成やフォローを担う立場にあります。葬儀業界では、自らも施行を担当しながらチームをまとめるプレイングマネージャーが多く、負担が集中しやすい傾向があります。
管理職に余裕がなければ、部下との対話もおろそかになり、結果としてチーム全体の士気が下がります。だからこそ、まずは管理職が安心してマネジメントに集中できる環境を整えることが、エンゲージメント向上の第一歩になります。
②自律性・熟達・目的を意識する
人が仕事にやりがいを感じるには、3つの要素が大切だと言われています。

一つ目は「自律性」です。自分で考え、判断し、行動できる余地があること。指示されたことをこなすだけでは、やらされ感につながります。
二つ目は「熟達」です。自分のスキルが上がっている、成長しているという実感のこと。葬儀の仕事は経験を積むほど対応力が磨かれます。その成長を本人が感じられ、周囲からも認められる仕組みがあると、働く意欲は高まります。
三つ目は「目的」です。自分の仕事が誰かの役に立っている、意味のあることをしているという感覚のこと。葬儀はご遺族の人生の節目に寄り添う仕事です。その社会的意義を、日々の業務の中で実感できる機会をつくることが大切です。
③バーンアウトを防ぐ
葬儀の仕事には、感情労働という側面があります。ご遺族の悲しみに寄り添い続けることは、自分でも気づかないうちに心をすり減らしていきます。
特に注意したいのは、責任感が強く真面目に取り組む社員ほど、限界まで頑張ってしまう傾向があることです。「頑張る人ほど燃え尽きやすい」という現実を、組織として理解しておく必要があります。
定期的な面談で状態を把握する、休暇を取りやすい雰囲気をつくる、業務量を調整する。こうした地道な取り組みの積み重ねが、社員が長く働き続けられる職場をつくります。
これら3つのポイントを踏まえた具体的な施策については、関連記事「従業員エンゲージメントとは|葬儀社の離職率を下げ採用力を高める方法」で詳しく解説しています。
まとめ|人材定着のポイントは従業員エンゲージメントの向上

葬儀業界は今、採用難と離職率の高さという二重の課題に直面しています。
全業種平均を下回る給与水準、キャリアパスの見えにくさ、体系的な教育体制の不足といった要因が、求職者から選ばれにくく、入社しても定着しにくい状況を生み出しています。
そして2025年問題により、この傾向はさらに加速しています。死亡者数の増加で需要は高まる一方、働き手は減り続けています。人材の獲得競争は、今後ますます厳しくなることが予想されます。
だからこそ、今いる社員に長く働き続けてもらうことが、これまで以上に重要になっています。
そのカギとなるのが、エンゲージメントという考え方です。給与を上げて不満を減らすだけでなく、「この会社で働き続けたい」と思える環境をつくることが求められます。管理職へのケア、自律性・熟達・目的を意識した仕事の設計、バーンアウトの防止といった取り組みの積み重ねが、人が辞めない会社をつくります。
社員が「働いて良かった」と思える会社は、求職者からも選ばれる会社になります。人材の定着と採用力の向上は、表裏一体の関係にあります。
本記事が、貴社の組織づくりを見直すきっかけになれば幸いです。
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