墓石業界の集客方法まとめ|霊園タイプ別の営業方針や訴求方法(Web・紙面)に関する現状と課題を解説
葬儀を終えたご遺族様は、ご自宅に仏壇や位牌を構えて、そしてお墓に遺骨を埋葬して、故人様の供養を継続的に行います。
そのことからも、供養業界において、墓石店は葬儀社や仏壇店と並んで重要なポジションにあることが分かります。
しかも近年はライフスタイルの多様化に合わせて、納骨堂や樹木葬などの新たな埋葬方法の提案が求められています。
このような中で、墓石業界ではいったいどのような形で集客活動をしているのでしょうか。
この記事では、WEBと紙面による訴求を中心に、墓石業界の集客について解説いたします。
もくじ
【霊園タイプ別】墓石店の営業方針の基本
墓石業界の集客について知るには、墓石店の営業方針について把握しておかなければなりません。
なぜなら、墓石店の営業活動は、自社で施工できる墓地・霊園を保有しているかいないかによって大きく異なるからです。
この観点から、墓石店目線で見た場合、墓地・霊園は次の3つに大別されます。
- 自社保有の霊園(民営霊園)
- 提携先の墓地・霊園(寺院墓地や地域の共同墓地など)
- 施工業者不問の墓地・霊園(公営霊園など)
これらの違いは、墓石建立のための墓地区画を所有しているかいないかの違いです。
墓地区画さえ確保していれば、自社で独占的に墓石の建立を受注できるため、他社との競合にはなりません。競合の有無によって、広告戦略も大きく異なってくるのです。
順に解説いたします。
1.自社保有の霊園
自社で霊園を保有しているということは、墓地区画さえ販売すれば、自動的に墓石の建立も自社で請け負うこととなります。
たとえば永代使用料100万円の墓地区画に、100万円の墓石を建立すると、墓石店に200万円のお金が入ってくることになります。
そのため、自社保有の霊園を販売する時は、現地見学会などを催し、墓地と墓石をセット価格でパッケージングして販売するところが多い傾向にあります。
また、自社霊園ですから、顧客ニーズに合わせた霊園開発や、自社独自のお墓の提案ができます。
樹木葬墓地や、モダン墓石、ペットと入れるお墓などの、特定のコンセプトをベースにしたお墓の多くが民営霊園から登場しているのはそのためです。
もちろん、霊園開発には莫大な予算を先行投資しなければならないため、資本力を有しているか、あるいは開発業者との提携が必要となります。
2.提携先の墓地・霊園
寺院墓地や地域の共同墓地の「指定の施工業者」として提携することにより、その墓地・霊園の施工案件を独占的に受注できます。
もしもこうした墓地・霊園で新たにお墓を建てた場合、墓地の永代使用料は墓地を管理するお寺や地域の自治会に、墓石建立の費用は石材店に入ってくることになります。
お寺や自治会から見た、特定の石材店との提携のメリットは、次の3つが考えられます。
- 墓地への頻繁(ひんぱん)な出入りが発生するため、勝手を知った墓石店の方がいいから
- 大切な檀家や住人のお墓だからこそ、信頼できる墓石店の施工の方が安心だから
- 特定の墓石店と契約しておくことで手数料収入(マージン)が発生するから
もちろん、特定業者との提携をしていない墓地・霊園もたくさんありますし、指定業者を定めた上で、手数料を受け取らないというケースもあります。
石材店側からすると、こうした提携の墓地や霊園が数多くあることで、その墓地内で案件が生じた分だけ受注を囲い込めるだけでなく、他社との競合を回避できます。
3.施工業者不問の墓地・霊園
1.2に該当する霊園は、出入りの墓石業者が定められています。そのため、墓石の案件を受注した時に、他社と競合することなく墓石の商談を進めることができます。
しかし中には、墓石業者を問わない墓地や霊園もあります。
公営霊園がその代表例ですが、その他にも寺院墓地や地域の共同墓地なども、特定の墓石店と提携していないところは数多くあります。
この場合、墓地の利用者が自由に墓石店を選ぶことができます。墓石店側からするといわゆる「相見積もり」、他社との競合になってしまうのが常です。
【霊園別】墓石店の営業方針のまとめ
ここまでを整理すると、墓石店としては、自社施工できる霊園を多く抱えておきたいというのが本音です。
なぜならその方が、他社に邪魔されることなく顧客と向き合えるからです。
大資本を持つ業者であれば、お参りしやすい霊園を開発をして、その中で顧客ニーズに応える墓石を提案することで、顧客の獲得が可能でしょう。
お参りのしやすさは、立地やアクセス・周辺環境によって決まるため、霊園開発が上手くいくかどうかが成功のカギです。
霊園開発をするほどの資本を持っていない多くの墓石店は、地域のお寺や共同墓地の管理者に営業をかけて、出入り業者として認めてもらうことがポイントとなります。
その墓地内の施工を独占的に請け負うことで、新規建立だけでなく、文字彫刻やリフォーム、墓じまいなどのさまざまな案件を受注でき、他社との競合もありません。
公営霊園など、業者を問わない墓地・霊園の場合は、他社との競合の中で、デザインや価格など、いかに魅力的な提案ができるかどうかがカギとなります。
墓石業界のこうした営業方針を押さえた上で、それでは紙媒体とウェブ媒体の集客について解説していきます。
紙媒体による集客
インターネットが全盛の昨今であっても、墓石業界においてはいまでも紙媒体による集客が根強いように思われます。
それは、墓石の購買層が新聞の購読層と重なっていること、そして、墓石の購入がきわめて地域に根差した買い物であることに起因するからです。
新聞折込
新聞折込チラシはいまでも多く用いられる手法です。それは、お墓を考えている多くの人が自宅からお参りしやすい場所にお墓を求めているからです。
地域単位で配布できる新聞折込は、霊園や墓石の広告には最適な手段のうちのひとつです。
また、墓石の顧客のボリュームゾーンと新聞購読のボリュームゾーンが重なっている点も見逃せません。
ポスティング
ポスティングとは、特定エリアの家々のポストにチラシを直接投函する手法です。
ポスティングだと、より細かくエリアを指定でき、新聞を購読していない世帯にもリーチできます。
記事広告
ローカル新聞やタウン誌などの記事広告を用いることで、霊園や墓石の魅力を知ってもらい、認知度を高めることができます。
先ほどからお伝えしている通り、霊園や墓石はその地域に紐づいてるため、特定の地域やコミュニティに向けて作られたローカル新聞やタウン誌は、墓石業界の広告との親和性が高いメディアと言えるでしょう。
また、自社のことを自ら宣伝せずに、影響力のあるメディアに語ってもらうことで、第三者による評価という文脈で広告を打てます。
WEBメディアによる広告
最近では、インターネットで霊園を検索する人も少なくありません。
このような傾向を受けて、紙媒体よりもWEBメディアを活用した広告戦略が主流となりつつあるようです。
墓石業界においてはどのようにWEBメディアを活用しているのでしょうか。
リスティング・ディスプレイ広告
リスティング広告とは、検索キーワードに対して、検索結果画面に掲載されるテキスト形式の広告のことです。
WEBで「地域名 お墓」や「地域名 霊園」などとキーワード検索するユーザーに直接リーチできます。
また、ディスプレイ広告とは、さまざまなWEBサイトやアプリの上でバナー広告を表示させる手法です。
リスティング広告、ディスプレイ広告のいずれにおいても、クリックされた場合のみしか広告費用が発生しないため、無駄なコストをカットして、効率的に集客ができます。
Eコマース
墓石は、物品の販売ではなく、施工を請け負うものです。そのため、ネット上で、「購入」「決済」「配達」を完結させるEコマースはそもそも成立しません。
しかし、限りなくEコマースに近い形を採用しているのが、株式会社まごころ価格ドットコムです。
こちらでは、可能な限りWEB上で商談を完結させるために、商材カタログを取り寄せ、現地の測量と撮影を顧客が行い、必要事項を記入した「お取り寄せシート」を送付することで、墓石工事の発注ができる仕組みになっています。
現地での墓石工事は、日本全国の提携業者が派遣される形をとり、営業経費をカットすることで、顧客の費用負担軽減に結び付けています。
ポータルサイトへの掲載
日本全国の霊園情報をまとめるポータルサイトを利用することで、さらなる集客を図ることができます。
具体的には鎌倉新書「いいお墓」、エイチーム「ライフドット」、日本石材産業協会「お墓の窓口」、全国石製品協同組合「みんなのお墓」などがあります。
このような紹介サイトを通じて霊園の申し込みをした方が成約に至ると、サイトに対して手数料を支払います。
また掲載時に広告費をかけることで、より目につきやすい場所に掲載してもらえます。
石材店側としては、成約時の手数料と、必要であればオプションの広告費をかけて集客を図ることとなります。
とはいえ、ポータルサイトから顧客紹介を受けた場合、一定の紹介手数料支払い義務が発生しますので、依存しすぎないよう注意が必要です。
おわりに
本記事では、墓石業界における紙媒体やウェブ媒体を用いた集客方法について解説してきました。
これから霊園を探す人、あるいは墓地区画を取得してお墓の建立を考えているエンドユーザーに対して、いわゆるBtoCにおいては紙媒体やウェブ媒体での広告は有効です。
しかし、墓石業界においては、いかに自社で施工できる墓地や霊園を確保できるかが大切になってきます。
墓地がないことには、お墓が建たないのです。
そのためには、自社による霊園の開発か、既存の墓地や霊園との提携の2択となります。
大資本を持たない多くの石材店は後者に活路を見出す傾向にあり、こうした営業戦略においては1対N(多数)の広告戦略はあまり有効ではありません。
むしろ、お寺の住職や地域の自治会といった人と人とのつながりが重要となってくる傾向が強いため、出入りの墓地・霊園の確保には、地道な営業活動が求められるでしょう。
墓地管理者への営業活動とエンドユーザーへの集客活動。この両面を並行して行うことが大切です。