葬儀業界のES向上完全ガイド〜採用成功と定着率改善を同時に実現する具体的施策〜

葬儀業界では、人手不足が深刻な課題となっています。厚生労働省のデータによると、2024年末時点における葬儀業に従事する人材の有効求人倍率は7.59倍にのぼり、全産業平均の1.35倍を大きく上回っています。
「採用してもすぐに辞めてしまう」「求人を出しても応募が集まらない」といった悩みを抱える葬儀社は少なくありません。
この課題を解決する手がかりの一つが、ES(Employee Satisfaction:従業員満足度)の向上です。
ESとは、従業員が職場環境や労働条件にどれくらい満足しているかを示す指標のことです。
ESを高めることで定着率の改善につながり、その結果として採用活動にも良い影響を与えます。
本記事では、ESの基本的な考え方から、葬儀業界に適した調査方法、具体的な向上施策、さらにはESを採用活動に活かす方法まで、順を追って解説します。
人材課題の改善に向けた第一歩として、ぜひ参考にしてください。
ES(従業員満足度)とは?

ESを高めるための施策を考える前に、まずはESとは何かを正しく理解しておきましょう。ここでは、ESの定義や役割、そして葬儀業界の現状について解説します。
ES(従業員満足度)の定義
ESとは「Employee Satisfaction」の略称で、日本語では「従業員満足度」と訳されます。従業員が自社の働く環境や待遇に対して、どのくらい満足しているかを表す指標です。
ESを左右する要素としては、主に以下のようなものがあります。
- 仕事内容
- 職場環境
- 人間関係
- 給与・待遇
- 福利厚生
これらの要素に満足していればESは高く、不満が多ければESは低い状態といえます。
なお、ESと似た言葉に「従業員エンゲージメント」があります。ESが働く条件への満足度を表すのに対し、エンゲージメントは会社への愛着心や「貢献したい」という気持ちを指します。この2つは別の考え方ですが、ESが高い会社ではエンゲージメントも高まりやすい傾向があります。
従業員エンゲージメントについては、関連記事「従業員エンゲージメントとは|葬儀社の離職率を下げ採用力を高める方法」で詳しく解説しています。
ESが高い企業・低い企業の違い
ESの高さは、企業にさまざまな影響を与えます。ここでは、ESが高い企業と低い企業でどのような違いが生まれるかを見ていきましょう。

ESが高い企業では、従業員が「この会社で働き続けたい」と感じやすくなります。その結果、離職率が下がり、採用や教育にかかるコストを抑えることができます。
また、働く環境に満足している従業員は、仕事に前向きに取り組む傾向があります。これがサービスの質の向上につながり、顧客満足度にも良い影響を与えます。
一方、ESが低い企業では、従業員の離職が増えやすくなります。人が辞めるたびに採用・教育のコストがかかり、経営を圧迫する要因となります。
さらに、残った従業員の負担が増えることで、さらにESが下がるという悪循環に陥ることもあります。
ESは定着率改善の「一因」
ただし、ESを高めれば定着率の問題がすべて解決するわけではありません。給与水準やキャリア機会、業界特有の労働環境など、定着率に影響する要因はほかにもあります。
ESはあくまで定着率を改善するためのひとつの要因であり、他の施策と組み合わせて取り組むことが大切です。
葬儀業界のESが低い理由
前述のとおり、ESは定着率に影響を与える重要な要素です。しかし葬儀業界は、他の業界と比べてESが低い傾向にあります。
その背景には、葬儀という仕事ならではの特徴が関係しています。

まず、24時間対応による不規則な勤務があります。葬儀の依頼は時間を選びません。深夜や早朝でも連絡が入れば対応する必要があり、24時間365日の待機体制が求められます。
こうした働き方は従業員の生活リズムを乱しやすく、特に入社間もない従業員にとっては大きな負担となります。
次に、感情労働による心理的な負担も見逃せません。葬儀の仕事は、悲しみの中にいるご遺族に寄り添い続ける仕事でもあります。
日々、人の死と向き合う業務は精神的な疲労が蓄積しやすいといわれています。
さらに、業界全体の人手不足と経営環境の厳しさも影響しています。厚生労働省によると、2024年末時点の葬儀師・火葬係の有効求人倍率は7.59倍にのぼり、全産業平均の1.35倍を大きく上回っています。求人を出しても人が集まりにくい状況です。
また、帝国データバンクの2024年調査によると、2024年1月から11月までに葬儀社の倒産・廃業は47件発生し、前年の約1.7倍のペースで過去最多を更新しました。
コロナ禍以降、家族葬や直葬など小規模で簡素な葬儀が増えたことで単価が下がり、経営が厳しくなっている葬儀社も少なくありません。

こうした経営環境の厳しさは、給与水準や労働条件にも影響を与え、ESの低下につながりやすい状況を生んでいます。
葬儀業界で人材定着・採用活動が難しい理由については、関連記事「葬儀業界の人材課題を解決する|採用難・離職率の原因とエンゲージメントの基本」でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
ES調査の進め方と実践ポイント

ESを高めるためには、まず自社の現状を正しく把握することが大切です。ここでは、ES調査を実施する際の具体的な進め方と、押さえておきたいポイントを解説します。
調査の目的設定と準備
ES調査を始める前に、まず「何のために調査を行うのか」という目的を明確にしておきましょう。
目的があいまいなまま調査を実施しても、結果をどう活かせばよいかわからず、改善につなげることが難しくなります。
たとえば葬儀業界では、入社後まもない従業員の離職が課題になっているケースが多くあります。
その場合は「入社1年以内の離職を防ぐために、新人が感じている不満や不安を把握する」といった具体的な目的を設定すると、調査項目も定まりやすくなります。
また、調査を実施する前に、経営層が本気で取り組む姿勢を見せることも重要です。「調査をやって終わり」ではなく、結果をもとに改善に取り組むという方針を、事前に全従業員へ伝えておきましょう。
あわせて、調査が匿名で行われることをしっかり説明し、安心して本音を回答できる環境を整えることが、正確な結果を得るための鍵となります。
葬儀業界に適した調査項目の設計
ES調査では、一般的な質問項目だけでなく、葬儀業界ならではの課題を把握できる項目を加えることが大切です。
たとえば、以下のような観点で質問を設計すると、現場の実態が見えやすくなります。
働き方について
- 深夜・早朝の呼び出しに対して、負担を感じていますか
- 休日や夜間に勤務した場合、代休は取れていますか
心理的な負担について
- ご遺族対応で感じるストレスを相談できる環境はありますか
- 精神的な負担へのサポートは十分だと感じますか
成長・やりがいについて
- 葬祭ディレクターなどの資格取得支援は充実していますか
- 仕事を通じて成長できていると感じますか
待遇・職場環境について
- 給与や評価に納得していますか
- 上司や同僚との人間関係は良好ですか
これらの項目を組み合わせることで、仕事内容、職場環境、人間関係、待遇、福利厚生といったESを構成する要素を幅広く把握することができます。
匿名性の確保方法
ES調査で正確な回答を得るためには、「本当に匿名なのか」という従業員の不安を取り除くことが欠かせません。
「正直に答えたら自分だとバレるのでは」という懸念があると、当たり障りのない回答ばかりになり、本当の課題が見えなくなってしまいます。
特に従業員数が少ない中小規模の葬儀社では、回答内容から個人が特定されやすいため、より丁寧な配慮が必要です。
匿名性を高めるためには、以下のような方法が有効です。
- 年齢や部署などの属性を問う質問は最小限にする
- 紙ではなくオンラインのアンケートツールを使い、筆跡で特定されるリスクを避ける
- 回答者が少ない項目は、集計結果を公開しない(たとえば該当者が3名未満の場合は非表示にする)
- 可能であれば、外部の調査会社に委託して客観性を高める
こうした工夫によって、従業員が安心して本音を回答できる環境を整えましょう。
結果の分析と従業員へのフィードバック
調査を実施したら、結果を分析して課題を明らかにしましょう。
分析のポイントは、「満足度が低く、かつ従業員にとって重要な項目」を見つけることです。
たとえば「働き方」への満足度が低く、同時にそれが離職意向にも影響しているようであれば、優先的に改善すべき課題といえます。
選択式の質問だけでなく、自由記述欄がある場合は、そこに書かれた内容にも目を通しましょう。数字だけでは見えない具体的な不満や要望が書かれていることがあります。
そして、分析と同じくらい大切なのが、結果を従業員にフィードバックすることです。調査をしたまま何も共有されないと、「どうせ何も変わらない」という不信感につながってしまいます。
フィードバックでは、調査結果の概要と、それを受けて会社がどのような改善に取り組むかを伝えましょう。
良い点と課題の両方をバランスよく共有し、改善策については「いつまでに」「誰が」取り組むのかを明確にすると、従業員の納得感が高まります。
従業員に「自分たちの声が届いている」と感じてもらえることが、ES向上への第一歩となります。
葬儀業界でESを高める5つの施策

ここからは、葬儀業界でESを高めるための具体的な施策を紹介します。いずれも葬儀業界の特性を踏まえた内容ですので、自社の状況に合わせて取り入れてみてください。
(1)労働時間・当直体制を見直す
(2)メンタルヘルスケアを充実させる
(3)キャリア支援と評価制度を整備する
(4)マネジメントと社内コミュニケーションを改善する
(5)福利厚生を充実させる
以下でそれぞれ確認していきましょう。
施策(1)労働時間・当直体制を見直す
葬儀業界では、24時間365日の対応が求められることが多く、長時間労働や不規則な勤務がESを下げる大きな要因となっています。
まずは、現状の労働時間や当直体制を見直すことから始めましょう。
たとえば、以下のような取り組みが考えられます。
- 当直の回数や頻度を見直し、特定の従業員に負担が偏らないようにする
- 夜間対応を外部の委託サービスに切り替える
- 深夜・早朝の出動後は、翌日の勤務を調整できる仕組みをつくる
- 年間休日数を増やす、または連休を取りやすくする
労働時間の削減や休日の確保は、従業員の心身の健康を守るだけでなく、「この会社で働き続けたい」という気持ちにもつながります。
すべてを一度に変えるのは難しくても、できるところから少しずつ改善していくことが大切です。
施策(2)メンタルヘルスケアを充実させる
葬儀の仕事は、日々ご遺族の悲しみに寄り添う「感情労働」です。人の死と向き合い続けることで、知らず知らずのうちに精神的な疲労が蓄積していくことがあります。
こうした負担を放置すると、モチベーションの低下や離職につながりかねません。従業員の心の健康を支える仕組みを整えることは、ES向上に欠かせない取り組みです。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 定期的に上司や人事担当者との面談の機会を設け、悩みや不安を話せる場をつくる
- 外部のカウンセリングサービスを導入し、社内では話しにくいことも相談できる環境を用意する
- 「つらいときは休んでいい」というメッセージを会社として発信し、無理をさせない雰囲気をつくる
- メンタルヘルスに関する研修を実施し、セルフケアの方法や周囲への声かけの仕方を学ぶ機会を提供する
「困ったときに相談できる場所がある」と従業員が感じられることが、安心して働ける職場づくりの第一歩となります。
施策(3)キャリア支援と評価制度を整備する
「この会社で成長できる」「頑張りがきちんと評価される」と感じられることは、ESを高めるうえで重要な要素です。
葬儀業界では、葬祭ディレクターなどの専門資格があります。資格取得に向けた費用補助や勉強時間の確保といった支援制度を整えることで、従業員が自分のキャリアを前向きに考えられるようになります。

また、評価制度の見直しも効果的です。「何を頑張れば評価されるのかわからない」「上司によって評価が違う」といった不満は、ESを下げる原因になります。
評価の基準を明確にし、本人にもきちんと説明することで、納得感のある制度をつくりましょう。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 葬祭ディレクターなど資格取得の費用を会社が負担する
- 研修や勉強会への参加を推奨し、スキルアップの機会を提供する
- 昇給や昇進の基準を明文化し、従業員に共有する
- 定期的な面談で、評価のフィードバックを丁寧に行う
「この会社で働き続ければ成長できる」という実感が、従業員の定着につながります。
施策(4)マネジメントと社内コミュニケーションを改善する
上司との関係や職場の人間関係は、ESに大きく影響します。どれだけ待遇が良くても、「上司に相談しにくい」「職場の雰囲気が悪い」と感じる環境では、従業員の満足度は上がりません。
葬儀業界では、かつて「見て覚える」「先輩の背中を見て学ぶ」といった育成スタイルが主流でした。
しかし、こうしたやり方は新人にとって何をすればよいかわかりにくく、不安や孤立感につながることがあります。
ESを高めるためには、上司やベテラン社員が意識的にコミュニケーションを取り、部下が安心して働ける環境をつくることが大切です。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 定期的に1対1の面談を行い、業務の悩みや不安を聞く機会をつくる
- 仕事を任せる際は丸投げにせず、ゴールを明確に伝えたうえで進捗を確認する
- 良い仕事をしたときはきちんと褒め、承認の言葉を伝える
- 管理職向けにマネジメント研修を実施し、部下との関わり方を学ぶ機会を設ける
「自分の意見を聞いてもらえる」「認めてもらえている」と感じられる職場は、従業員にとって働き続けたい場所になります。
施策(5)福利厚生を充実させる
福利厚生の充実は、従業員が「会社から大切にされている」と感じるきっかけになります。給与だけでは得られない満足感を生み出し、ESの向上につながります。
葬儀業界では、不規則な勤務や急な出勤が発生しやすいため、それを補う形での福利厚生が特に効果的です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 夜間勤務や休日出勤をした場合の代休取得を徹底する
- 慶弔休暇や特別休暇を整備し、取得しやすい雰囲気をつくる
- 健康診断の費用補助や、人間ドックの受診機会を提供する
- 住宅手当や家族手当など、生活を支える手当を充実させる
- 食事補助や社内での飲み物提供など、日常的に実感できる制度を設ける
福利厚生は、制度として用意するだけでなく、実際に利用されているかどうかも重要です。
「制度はあるけど使いにくい」という状態にならないよう、利用を促す声かけや、利用状況の確認も合わせて行いましょう。
ESの高さを採用活動に活かす方法

ESを高める取り組みを進めたら、その成果を採用活動にも活かしましょう。「働きやすい職場である」ということを求職者に伝えることで、応募の増加や採用コストの削減につながります。
(1)従業員の声を求人ブランディングに活かす
(2)ES指標を採用広報に活用する
(3)面接で企業文化・働きがいをアピールする
以下でそれぞれ確認していきましょう。
方法(1)従業員の声を求人ブランディングに活かす
求職者にとって、実際に働いている人の声は何よりも参考になる情報です。
求人広告や自社のホームページに、従業員のリアルな声を掲載することで、職場の雰囲気や働きがいを具体的に伝えることができます。
たとえば、以下のような方法があります。
- 従業員へのインタビュー記事や動画を作成し、求人ページに掲載する
- 「入社の決め手」「仕事のやりがい」「職場の雰囲気」など、求職者が知りたいテーマを取り上げる
- 採用サイトに社員紹介ページを設け、さまざまな職種・年代の従業員を紹介する
葬儀業界には、「人生の最期に寄り添う」という他の業界にはない社会的な意義があります。
この仕事ならではのやりがいを、働いている人の言葉で伝えることで、共感する求職者の応募につながりやすくなります。
方法(2)ES指標を採用広報に活用する
ES調査の結果を数値として公開することで、「働きやすい職場」であることを客観的に示すことができます。
求職者にとって、具体的な数字は会社を選ぶうえで説得力のある判断材料になります。
たとえば、以下のような指標が活用できます。
- 定着率(「入社3年後の定着率90%」など)
- 有給休暇の取得率
- 平均残業時間
- 従業員満足度の調査結果
- 研修や資格取得支援の利用実績
これらの数字を求人広告や会社説明会、採用サイトで紹介することで、企業の透明性や信頼性を高めることができます。
数字を出すことに抵抗を感じるかもしれませんが、良い数字はもちろん、「改善に取り組んでいる途中です」という姿勢を見せることも、誠実な印象につながります。
大切なのは、実態を隠さず伝えることです。
方法(3)面接で企業文化・働きがいをアピールする
面接は、求職者に自社の魅力を直接伝えられる貴重な機会です。ESを高める取り組みを進めているなら、その内容を面接の場でもしっかり伝えましょう。
葬儀業界を志望する求職者の中には、「体力的・精神的にきついのでは」「不規則な勤務に対応できるか不安」といった心配を抱えている人も少なくありません。
こうした不安に対して、自社の取り組みを具体的に説明することで、安心感を与えることができます。
たとえば、以下のような点を伝えると効果的です。
- 当直やシフトの負担を分散させる仕組み
- 資格取得支援や研修制度などの成長機会
- 悩みを相談できる体制やメンタルヘルスへの配慮
- 「新人の意見も聞いてもらえる」「失敗しても責められない」といった職場の雰囲気
また、可能であれば面接時に現場のスタッフと話す機会を設けると、求職者は実際の職場の雰囲気を感じ取ることができます。
「この会社なら安心して働けそうだ」と思ってもらえるよう、面接の場を企業文化を伝えるチャンスとして活用しましょう。
まとめ|ES向上は人材定着率アップ・採用改善の第一歩

本記事では、ES(従業員満足度)の基本から、葬儀業界におけるES調査の方法、具体的な向上施策、そして採用活動への活かし方までを解説しました。
葬儀業界は、24時間対応や感情労働といった特有の負担があり、ESが低くなりやすい環境にあります。
だからこそ、従業員が「この会社で働き続けたい」と思える職場をつくることが、定着率の改善、ひいては採用力の強化につながります。
ES向上に取り組む際は、まず自社の現状を知ることから始めましょう。
「調査で課題を把握し、できるところから改善を進め、その成果を採用活動にも活かしていく」という流れを意識することが大切です。
すべてを一度に変えることは難しくても、一つずつ取り組みを積み重ねることで、職場は少しずつ変わっていきます。
本記事の内容が、ES向上への第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
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