新事業進出補助金で葬儀業の新規事業を立ち上げる|活用シーンや申請準備を解説

家族葬・直葬へのシフトが止まらないなか、「大型会館の稼働率が下がる一方で、次の一手が見えない」と感じている葬儀社の経営者・スタッフの方は多いのではないでしょうか。
かつて「事業再構築補助金」という制度が、こうした事業転換を最大数千万円規模で支援してきました。その制度は2025年3月に終了しましたが、後継制度として「中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)」が2025年より新たにスタートしています。
補助上限は最大9,000万円と前身制度に匹敵する規模であり、樹木葬・遺品整理・エンバーミングといったポストフューネラル(葬儀後のサービス)領域への参入にも活用できる制度です。
この記事では、新事業進出補助金の基本情報から葬儀業界特有の活用シーン、申請に向けた準備の流れ、そして今後の制度移行の見通しまでを整理しています。「補助金を使って次の事業の柱を作りたい」と考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
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もくじ
新事業進出補助金とは|事業再構築補助金の後継

新事業進出補助金は、既存事業で培ったノウハウを活かしながら、これまでとは異なる新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を国が支援する制度です。2025年に新設され、事業再構築補助金の後継的な位置づけとして広く認知されています。
ただし、事業再構築補助金とはいくつかの点で性格が異なります。
事業再構築補助金がコロナ禍による打撃からの立て直しを主な目的としていたのに対し、新事業進出補助金は「今後の社会情勢や事業環境の変化に対応した成長の支援」を目的としています。
補助率は1/2と前身制度より低く設定されている一方、補助上限額は最大9,000万円(大幅賃上げ特例適用時)と拡大されており、財務的に健全で大型投資に対応できる企業により向いた設計になっています。
補助率・補助上限額・補助対象経費の基本情報
制度の基本的な数値は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 対象経費の1/2以下(特例による引上げなし) |
| 補助上限額 | ・従業員20人以下:2,500万円(特例3,000万円) ・従業員21〜50人:4,000万円(特例5,000万円) ・従業員51〜100人:5,500万円(特例7,000万円) ・従業員101人以上:7,000万円(特例9,000万円) |
| 補助下限額 | 750万円(補助対象経費が1,500万円未満の場合は対象外) |
| 補助対象経費 | 機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費(「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかを必ず含むこと) |
補助対象経費に「建物費」と「広告宣伝・販売促進費」が含まれている点は、会館改修や新規事業の集客施策まで幅広くカバーできるという意味で、葬儀業界には特に使い勝手の良い設計です。
ただし、「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかを必ず経費に含める必要があります。Webサイト制作費・広告宣伝費のみの構成では申請要件を満たさないため、注意が必要です。
なお、土地代および交付決定前に発注・契約した経費は補助対象外となるため、採択を待ってから着工することが大前提です。
大幅賃上げ特例は、事業計画期間中に①事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上、②給与支給総額を年平均6.0%以上増加させることを計画する事業者が対象です。特例適用時の補助上限額は従業員数に応じて上表カッコ内の金額が上限となります。
申請に求められる5つの基本要件
採択されるためには、以下の要件を満たす事業計画書を策定する必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 新事業進出要件 | 既存事業とは異なる新製品・新サービスを新規顧客に提供する事業であること(「新事業進出指針」の定義を満たすこと) |
| 付加価値額要件 | 事業計画期間(3〜5年)の付加価値額の年平均成長率+4.0%以上を達成する計画であること |
| 賃上げ要件 | 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が都道府県最低賃金の直近5年間の成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上 |
| 事業場内最賃水準要件 | 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上であること |
| ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、厚生労働省の専用サイト「両立支援のひろば」において公表していること |
補助金の返還義務が生じるのは、賃上げ要件(②)および事業場内最賃水準要件(③)が未達の場合で、未達成率に応じた金額の返還を求められます。付加価値額要件(①)については、付加価値が増加していないうえに企業全体の営業利益が赤字である場合や、天災など事業者の責に帰さない理由がある場合は返還が免除されます。
いずれにしても、「補助金をもらえれば終わり」ではなく、採択後も数年にわたる事業実績が問われる制度設計であることを十分に理解したうえで申請に臨むことが重要です。
葬儀業界における新事業進出補助金の活用シーン

本補助金の要件である「既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出」は、まさに葬儀業界が今直面している課題、すなわち「葬儀単価の下落を、周辺事業の多角化で補う」という方向性と一致しています。
ここでは葬儀業界で想定される活用シーンを4つのカテゴリに整理します。

活用シーン(1)供養の多様化・お墓関連(樹木葬・海洋散骨・手元供養など)
「先祖代々のお墓を守れない」という現代特有のニーズに応えるカテゴリです。
自社の遊休地や提携寺院の敷地を造成してシンボルツリーを配置した「樹木葬霊園」や「永代供養型の納骨堂」を新設する事業は、既存の葬儀施行事業と顧客層・提供サービスが明確に異なるため、新事業進出の定義を満たしやすい事業です。
また、自社ボートを改装した「海洋散骨」の専門サービス立ち上げや、自社会館内に「手元供養品・モダン仏壇専門ギャラリー」を設けて物販事業に参入する形も想定されます。
活用シーン(2)空間・物品の整理じまい関連(遺品整理・墓じまい・実家じまいなど)
核家族化により、残された遺族が最も頭を悩ませる「物理的な片付け」を代行する事業です。
「墓じまい」とは既存のお墓を撤去して遺骨を別の場所へ移す手続きを、「実家じまい」とは空き家になった実家の片付け・解体手配を指します。
一般廃棄物収集運搬業や古物商の許可を新たに取得し、葬儀施行後の遺族に対して「遺品整理」から「実家じまい」までをワンストップで請け負う専門部署を立ち上げる形が考えられます。補助金は専用の運搬トラック購入費(条件あり)や、回収品を一時保管・分別するための倉庫の建設・改修費、専用Webサイトの構築費などに充てることができます。
活用シーン(3)生前対策・死後手続きサポート(相続対策・身元保証・終活サロンなど)
単身高齢者の増加に伴い、「亡くなる前からの関係構築」を軸とした事業への参入が増えています。
行政書士や司法書士と提携し、自社会館のロビーを改装して「相続対策・成年後見人相談・身元保証サービス」を提供する会員制の終活サロンを新設する形が考えられます。「成年後見人」とは、判断能力が低下した方に代わって財産管理や契約手続きを行う制度上の役割を指します。
生前に身元保証の契約を結ぶことで将来の葬儀施行を確約し、安定的な売上基盤を構築するためのシステム開発費や内装工事費に補助金を活用できます。
活用シーン(4)専門的ケア・搬送特化(エンバーミング・湯灌・納棺・ご遺体搬送)
他社との明確な差別化や、同業者(BtoB)からの業務請負を目的とした事業です。
「エンバーミング」とは、ご遺体を衛生的に保全・修復する専門的な処置を指し、多死社会による火葬待ち日数の長期化が続く地域で特に需要が高まっています。
たとえば、海外製の専用機材を導入した「エンバーミング専門センター」を自社敷地内に建設し、地域の他の葬儀社から「エンバーミング」「湯灌・納棺」「ご遺体搬送」を外注として引き受ける新たなBtoB収益モデルを構築するための費用として活用できます。
申請に向けた準備と流れ|3つのステップと注意点

新事業進出補助金は申請要件が複雑で、準備不足による不採択が毎年多く発生しています。
申請から採択・入金までには数ヶ月単位の時間がかかるため、余裕を持ったスケジュール管理が採択への第一歩です。
申請ステップ(1)GビズIDプライムの取得と一般事業主行動計画の公表
GビズIDプライムとは何か
新事業進出補助金をはじめ、国が運営するほぼすべての補助金・助成金のオンライン申請において、GビズID(ジービズアイディー)プライムは必須のアカウントです。補助金の申請画面自体がGビズIDによる認証を前提に設計されているため、アカウントがなければ申請フォームにすら辿り着けません。
GビズIDは、デジタル庁が運営する法人・個人事業主向けの共通認証システムです。一度取得すれば、補助金申請のほか、社会保険の電子申請・税務関連の手続きなど、複数の行政サービスをワンアカウントで利用できます。
取得できるアカウントには2種類あり、補助金申請に必要なのは「プライム」のみです。

もう一方の「エントリー」はオンラインのみで即時発行できますが、補助金申請には利用できません。なお、プライムを取得した後は、社内の実務担当者向けに「GビズIDメンバー」というサブアカウントを発行できます。代表者に代わって担当スタッフが申請業務を行う場合に活用できる仕組みです。
取得方法は2通り|マイナンバーカードの有無で分岐する
GビズIDプライムの申請は、公式サイトからスタートする手順は共通です。途中の「事前チェック」でマイナンバーカードの有無を選択した時点で、オンライン申請と書類郵送申請に分岐します。
| 申請方法 | 必要なもの | 発行までの目安 |
|---|---|---|
| オンライン申請 | マイナンバーカード+NFC対応スマートフォン | 最短即日 |
| 書類郵送申請 | 印刷した申請書(実印押印)+印鑑証明書 | 約1週間 |
取得手順は以下のとおりです。
①GビズID公式サイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)にアクセスする
②「GビズIDアカウントの作成をはじめる」ボタンをクリックする


③「プライムアカウントを申請する」をクリックする

④事前チェックで「申請者の区分(法人代表者または個人事業主)」を選択する

⑤「マイナンバーカードの有無」を選択し、以降の手順を進める

一般事業主行動計画の公表も忘れずに
GビズIDと並んで、申請前に時間がかかる準備がもう一つあります。「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」を策定し、厚生労働省の専用サイト「両立支援のひろば」において公表することが申請の必須要件となっています。
従業員数100名以下の企業も対象です。公表手続きには1〜2週間程度かかるため、GビズIDの取得と並行して早めに着手してください。
申請ステップ(2)事業計画書の策定と必要書類の収集
事業計画書には「現状の課題と事業転換の必要性」「新規事業の市場分析と競合優位性」「3〜5年間の精緻な収益計画(付加価値額・賃上げ目標の数値を含む)」を盛り込む必要があります。
第3回公募から審査が「書類の形式的な整合性」よりも「代表者自身が事業内容を理解し、実行できるか」を重視する方向に強化されています。
口頭審査では申請事業者本人(代表者等)のみが対応できるため、外部コンサルタントが作成した計画書をそのまま提出するだけでは採択が困難です。事業構想の段階から経営者自身が深く関与することが、採択率を高める最大のポイントです。
また、直近の決算書・建物の図面・設備購入の相見積もり(2社以上)など、多数のエビデンス書類の収集も並行して進めます。
申請ステップ(3)電子申請

すべての書類をPDF化し、電子申請システム「Jグランツ」から提出します。締切当日はアクセスが集中することもあるため、前日までに提出を完了させることが理想です。
公募要領や申請フォーマットは公募回ごとに更新されます。古い要領をもとに準備を進めると要件を満たさず不採択になるリスクがあるため、必ず公式サイトから最新版を確認してください。
今後の制度移行について|「新事業進出・ものづくり補助金」への統合

現行の新事業進出補助金は、2025年度末までに合計4回程度の公募が予定されており、現行制度での申請は第4回公募が最終回となる可能性があります。
2026年度以降は、現行の新事業進出補助金とものづくり補助金が統合され、「新事業進出・ものづくり補助金(仮称)」として再編・継続される方針が中小企業庁より示されています。統合後も「新事業進出」の申請枠は維持される見込みですが、審査基準や要件が変更される可能性があります。
| 時期 | 制度 | 状況 |
|---|---|---|
| 2021年〜2025年3月 | 事業再構築補助金(第1〜13回) | 終了 |
| 2025年4月〜2026年度中 | 中小企業新事業進出補助金 | 現在申請受付中 |
| 2026年度以降 | 新事業進出・ものづくり補助金(仮称) | 統合・再編予定(詳細未公表) |
現行制度の要件に自社の事業計画が合致しているのであれば、統合前の第3回または第4回公募での申請を検討することが推奨されます。
まとめ|葬儀業が新事業進出補助金で「次の柱」を作るために

この記事では、新事業進出補助金の基本情報から葬儀業界特有の活用シーン、申請準備の流れ、今後の制度移行の見通しまでを解説しました。
事業再構築補助金から引き継がれた「新事業進出補助金」は、補助上限最大9,000万円という規模感はそのままに、「採択後の事業で本当に成果を出せるか」を厳しく問う制度設計に進化しています。
賃上げ・付加価値額の目標を達成できなければ補助金の返還を求められる仕組みは、裏を返せば「きちんと新事業を軌道に乗せる覚悟がある会社だけが受けるべき補助金」であることを意味しています。
葬儀業界においては特に、「遊休設備や既存の顧客リストをどう次のビジネスに繋げるか」という視点が事業計画書の説得力を高める鍵になります。樹木葬・遺品整理・エンバーミングといった領域への参入を検討している方は、事業構想の段階から専門家への相談を始めることを推奨します。
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