長野県における葬儀の作法としきたり
同じ県内でもエリアごとに葬送習慣が異なるケースがありますが、その傾向が非常に顕著(けんちょ)なのが長野県です。
地域ごとに葬儀の流れにも違いがみられるため、葬儀社様も各エリアに合った対応が求められます。
他地域からの参列者や転入者が驚くような葬送習慣もあるため、しっかりと把握しておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、長野県におけるエリアごとの葬送習慣やしきたりについて、分かりやすく紹介します。
葬儀社様ホームページに記載しておいた方がよい情報もありますので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
長野県の葬送習慣が、エリアごとに大きく異なる理由
山々に囲まれた地形の長野県は、居住可能な平地が分散して存在しており「善光寺平」「松本平」「佐久平」「諏訪(すわ)平」の4盆地に人口が集中しています。
県内の行政区も長野市を中心とした北信、上田市や佐久市を中心とした東信、松本市を中心とした中信、伊那(いな)市を中心とした南信に4分割されており、それぞれの盆地ごとに方言や文化が異なるようです。
面している街道などの地理的要因や江戸時代までの歴史、地域ごとに交流の深い地域が異なる点などが文化的相違の一因とされています。
東信地域は中山道を通じて関東地方との交流が盛んでしたが、千曲川(ちくまがわ)沿いの北信地域は古くから新潟県とのつながりが深い地域です。
こういった事情から各エリアで生活習慣も異なるため、葬送に関するしきたりにも違いがみられます。
長野県における葬儀の特徴
現在では都市部を中心に近隣住民の交流が希薄になりつつありますが、長野県では近隣住民の相互扶助(そうごふじょ)組織である「隣組」が今でも機能しています。
地域ごとに文化は異なっても、助け合いの精神は共通のようです。
隣組は仕事を休んで葬儀の手伝い
長野県では、10軒ほどで組織された「隣組」内で不幸があった場合、仕事を休んででも葬儀を手伝うのが当然と考えられています。
地域によっては手伝いにとどまらず、葬儀全体を「隣組」が取り仕切るケースもあるようです。
かつては日本各地でみられた「隣組」ですが、近年では限られた地域でしか見かけることもありません。
そのため他の地域から引っ越してきた方は、こういった習慣に戸惑うケースも多いようです。
葬儀で紅白水引?
通夜・葬儀に参列する際には、黒白水引の不祝儀袋にお香典を入れて受付に渡すのが一般的ですが、長野県ではお香典と一緒に紅白水引の「お見舞い」を渡すケースがあります。
生前にお見舞いに行けなかった不義理を詫びる意味を持つ習慣で、中には「お見舞い」のみを渡す方もいるようです。
前火葬と後火葬
全国的には通夜→葬儀・告別式→火葬の流れで行うのが一般的ですが、長野県では通夜→火葬→葬儀・告別式の順で行われる「前火葬」が半数以上を占めます。
「前火葬」は交通手段が今ほど発達していなかった時代、北海道や東北地方など冬季の往来が困難だった地域に多い風習です。
山岳地帯の多い長野県も、かつては他地域から葬儀に参列するのに時間がかかったため、遺体の腐敗が進む前に火葬したようです。
葬儀の時点で荼毘(だび)に付されてしまっているため、葬儀自体は祭壇に遺骨を安置して行う「骨葬(こつそう)」となります。
そのため故人の顔を見てお別れしたい場合は、事前に火葬のタイミングを確認したうえで早めに到着しなければなりません。
一方、長野市を中心とした北信地域では、通夜→葬儀・告別式→火葬の順で行う「後火葬」が主流です。
北信地域では遺族が火葬場に向かう際に「いろ」と呼ばれる白い布を方から掛ける習慣があります。
白は現世と浄土を結ぶ色と考えられており、あの世とこの世の境まで故人を見送るという意味があるようです。
門牌(もんぱい)
長野県では、不幸があった家の前に位牌(いはい)を大きくしたような「門牌(もんぱい)」を飾る習慣があります。
「門牌」には位牌と同様に戒名や享年などが記されますが、サイズは1m以上と大きめで中には3mほどの巨大なものもあるようです。
「門牌」は「亡くなった方の供養としてお布施を行いますので、どうぞお立ち寄り下さい。」という意味を持つ風習といわれています。
そのため、生前に故人とかかわりがなくとも「門牌」に手を合わせる方には、食べ物や金銭を施す(ほどこす)のが通例でした。
現在では金銭や物を渡すことはありませんが、通りすがりの方が「門牌」に手を合わせることも少なくないようです。
独特な東信地域の葬送習慣
長野県の中でも中山道を通して他県との交流が多かった東信地域では、葬送習慣にも関東地方などからの影響がみられます。また隣接する山梨県と共通する葬送習慣も少なくありません。
生活改善方式とは
佐久市や小諸市(こもろし)などでは、行政主導で冠婚葬祭の負担軽減などを目的とした「新生活運動」を推進しているため、葬儀も「生活改善方式(公民館方式とも呼ばれる)」で行われるケースが多いようです。
「生活改善方式」での葬儀では、近隣住民や故人の会社関係者などはお香典を一律1000円とし、後日改めての香典返しはしません。
この慣習は地域に限定して適用されるため、他県からの参列者などは通常通りのお香典でも問題ありません。
「生活改善方式」は、かつて全国的に広まった「新生活運動」にもとづく葬送形式です。
明治時代以降に市民生活の向上を目標に行われてきた「生活改善運動」を引き継ぐ形で、戦後に群馬県を中心に合理的な生活を目指した「新生活運動」が立ち上げられました。
一時は全国的な広がりをみせた「新生活運動」も、日本が高度成長期を迎えたことで徐々に下火になり、現在では群馬県や長野県・静岡県の一部の市町村に残されているのみです。
しかし長野県の東信地域や、南信地域の中でも東信寄りな伊那市などでは、今でも「生活改善方式」の葬儀がみられます。
位牌(いはい)分け
一般的に故人の位牌(いはい)は1つ(地域によっては寺院に納める分と合わせ二つ)のみ作られます。
しかし長野県の東信地域では、故人の子供(既婚者:きこんしゃ)全員分の位牌を作り、それぞれの自宅の仏壇に祀る「位牌分け」のしきたりがあります。
「位牌分け」は、隣接する山梨県や静岡県などの中部地域や、群馬県など北関東の一部でも見られる習慣です。
「位牌分け」が行われるようになった正確な経緯(けいい)は不明ですが、かつては河川の氾濫(はんらん)などで位牌が流され喪失することも多かったためという説もあります。
告別式を前倒し
東信地域では葬儀に先立って告別式が行われるため、一般参列者は葬儀開始時間の30分~40分前に式場を訪れて焼香を済ませます。
うっかり葬儀開式時間ギリギリに到着した場合、お焼香できない可能性もあるため注意が必要です。
現在では葬儀と告別式が続けて行われるケースが多いですが、実は葬儀と告別式は目的が大きく異なります。
本来、葬儀は僧侶が故人に引導を渡し、追悼・供養のための読経を行う宗教儀式です。
一方の告別式は参列者が故人を偲び今生の別れを告げるための時間で、宗教儀式ではありません。
こういった事情を考えれば、葬儀に先立って告別式を行う習慣には何ら不都合はないといえるでしょう。
まとめ
葬儀社さんのコラムとしてこのような記事の掲載をおこなっておくと、喪主様・ご遺族様・ご参列の方々も分かりやすく、興味を持たれる内容かもしれません。
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