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「デジタル化・AI導入補助金」を葬儀社が活用する方法|審査を通す申請のポイント

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葬儀社・葬祭事業者の現場では、スタッフの高齢化によるIT対応力の不足、インボイス制度への対応で限界を迎えた経理担当者の負担、そして顧客情報がベテランの頭の中にしか存在しないという属人化の問題が、深刻な経営課題として積み重なっています。

こうした社内業務の非効率を解消するために活用できるのが、デジタル化・AI導入補助金(旧称:IT導入補助金)です。本記事では、制度の基本から補助率・申請ステップ・葬儀社の採択実績まで、申請に必要な情報を体系的に解説します。

解説にあたっては、2026年3月に経済産業省資源エネルギー庁が発表した「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」の内容も踏まえ、業務効率化にとどまらない施設運営コストの最適化という視点も交えてお伝えします。

補助金の存在は知っているが申請に踏み出せていない方、採択率が下がっていると聞いて不安を感じている経営者・担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

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もくじ

デジタル化・AI導入補助金とは|知っておきたい制度の基本

パソコン

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社の業務課題を解決するために、ソフトウェアやクラウドサービスなどのITツールを導入する際にかかる費用の一部を国が補助する制度です。

従来「IT導入補助金」として広く認知されていた制度が2026年度より名称を改めたもので、制度の運営主体は独立行政法人中小企業基盤整備機構です。名称変更に伴い、生成AIをはじめとするAI機能を備えたツールの位置づけが制度上も明確化されており、AI活用を重視する姿勢がより強く打ち出されています。

持続化補助金との違い|「外向き」と「内向き」の使い分け

持続化補助金との違い

葬儀業界で活用できる代表的な補助金として、小規模事業者持続化補助金と並んで言及されることの多い制度ですが、両者は活用の方向性が大きく異なります。

持続化補助金が「新規顧客の獲得や販路開拓など、外に向けた攻めの投資」を支援するものであるのに対し、デジタル化・AI導入補助金は「社内業務の効率化・システム化など、内に向けた守りの投資」を支援するものです。集客施策と内部基盤の整備、それぞれの目的に応じて使い分けることが重要です。

葬儀社が抱える三重苦とこの補助金が重要な理由

少子高齢化に伴う死亡者数の変動と慢性的な人手不足、インボイス制度への対応、そして近年の電気料金高騰による光熱費負担の増大が重なっている現在、葬儀社が抱える経営課題は多方面で深刻さを増しています。

省エネはかつて「環境への配慮」として語られていましたが、斎場の空調・照明・冷蔵設備の運用コストがキャッシュフローに直結する重要な経営課題へと性格が変わりました。こまめな消灯や設定温度の管理といった従来型の対策はすでに効果が鈍化しており、デジタル・AI技術を活用した抜本的な転換が求められています。

顧客管理や経理・勤怠といったバックオフィス業務のシステム化と、施設設備の省エネデジタル化は、どちらも同じデジタル化投資として一体的に計画することで投資対効果が高まります。スタッフが本来注力すべきご遺族対応に時間と労力を集中できる環境を整えながら、施設運営コストを段階的に下げていく道筋を描くことが、この補助金の最大の活用意義です。

補助率・上限額・対象経費|申請前に確認すべき基本条件

紙幣と電卓

葬儀社が申請する際に主に検討する枠は「通常枠」と「インボイス枠(インボイス対応類型)」の2種類です。それぞれの補助率と上限額を確認しておきましょう。

通常枠の補助率と上限額

顧客管理システム(CRM)や勤怠管理システムなど、幅広い業務効率化ツールの導入に使える枠です。

項目 内容
補助率 補助対象経費の1/2以内(最低賃金近傍の要件を満たす事業者は最大2/3)
補助上限額 5万円〜450万円(導入する業務プロセスの数によって変動)
主な対象ツール 顧客管理(CRM)・グループウェア・勤怠管理・販売管理など

インボイス枠(インボイス対応類型)の補助率と上限額

会計処理や受発注業務をインボイス制度に対応させるためのシステム導入に特化した枠です。近年最も申請が集中しており、採択実績も多い枠です。

項目 内容
補助率 小規模事業者(従業員5名以下):最大4/5(80%)/中小企業:最大3/4
補助上限額 最大350万円(ソフトウェア費用に対する補助)
主な対象ツール PC・タブレット等:最大10万円(補助率1/2)/レジ・券売機等:最大20万円(補助率1/2)

なお、ハードウェアへの補助はソフトウェアとセットで導入する場合に限られます。単独でのPC購入には補助が適用されません。

対象となる経費の範囲

本補助金の最大の特徴は、国に事前登録された「IT導入支援事業者(ベンダー)」とパートナーを組み、同じく事前登録された「ITツール」を導入しなければならないという点です。知人のシステム会社に依頼してゼロから開発するスクラッチ開発は対象外となります。

対象となる主な経費は以下のとおりです。

  • 事前登録済みソフトウェアの購入費・クラウドサービスの利用料(最大2年分)
  • 導入に伴う初期設定費用、操作マニュアルの作成費・研修費(導入関連費)
  • インボイス枠のみ:要件を満たすPC・タブレット等のハードウェア購入費

採択率の急落が示すもの|「出せば通る」時代が終わった背景

下降グラフ

2025年度の採択率推移

数年前まで「申請要件を満たせば70〜80%以上の確率で採択される」と認知されていた本補助金ですが、2024年度以降は審査基準の厳格化が進み、採択率が大幅に低下しています。

申請時期 採択率
2025年度 第1次締切 通常枠 50.7%
2025年度 第3次締切 通常枠 30.4%
2025年度 第5次締切 通常枠 37.0%
2025年度 第7次締切 通常枠 37.9%

直近の第7次締切では通常枠の採択率が37.9%で、申請者の約3分の2が採択されない状況が続いています。かつての「出せば通る」という認識は完全に過去のものとなっています。

採択されるために求められる「説明力」とは

採択率が低下している背景には、申請件数の増加と審査基準の厳格化があります。現在の審査では、「ITツールを導入したい」という意思だけでは評価されません。

審査員が見ているのは、「自社の経営課題がどのような状態にあり、特定のITツールを導入することで労働生産性がどれだけ向上するか」を数値目標を交えて論理的に説明できているかという点です。

事業計画では、交付申請時点の翌事業年度以降3年間にわたり、労働生産性を年平均3%以上向上させる計画を策定することが求められます。たとえば「経理担当者1名が請求書処理に月40時間かけているところを、クラウド会計ソフトの導入により月10時間に削減し、浮いた時間を接客業務に充てる」という具体的なストーリーを事業計画書に落とし込む力が求められています。

なお、過去にIT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者が再度申請する場合は追加の要件が課されるほか、過去と同じ業務プロセスのツールを申請すると減点または不採択になる場合があります。2回目以降の申請を検討される場合は、この点を事前に確認することが重要です。

また、経産省の手引きが示すように、デジタル化投資は「業務を楽にする」効果と「施設の光熱費を削減する」効果を同時に語れるケースがあります。省エネ効果と生産性向上を一体的に計画に盛り込むことで、事業計画の説得力はさらに増します。

申請の流れ|5つのステップで理解する手続きの全体像

デジタル化・AI導入補助金の流れ

本補助金は、IT導入支援事業者と連携しながら専用ポータル(デジタル化・AI導入補助金ポータル)上で手続きを進めます。

申請ステップ(1)自社課題の整理とgBizIDプライムの取得

まず、社内のどの業務(顧客管理・経理・勤怠など)に非効率が生じているかを洗い出します。同時に、電子申請に必須となるgBizID(ジービズアイディー)プライムアカウントの取得手続きを開始します。

gBizIDとは

gBizIDは、デジタル庁が運営する法人・個人事業主向けの共通認証システムです。一度取得すれば、補助金申請のほか、社会保険の電子申請や税務関連の手続きなど、複数の行政サービスをワンアカウントで利用できます。

デジタル化・AI導入補助金をはじめ、国が運営するほぼすべての補助金・助成金のオンライン申請においてgBizIDプライムは必須です。申請画面自体がgBizIDによる認証を前提に設計されているため、アカウントがなければ申請フォームにすら辿り着けません。

取得できるアカウントには2種類あります。補助金申請に必要なのは「プライム」のみです。もう一方の「エントリー」はオンラインで即時発行できますが、補助金申請には利用できません。

GビズID

取得方法は2通り|マイナンバーカードの有無で分岐する

gBizIDプライムの申請は、公式サイトからスタートする手順は共通です。途中の「事前チェック」でマイナンバーカードの有無を選択した時点で、オンライン申請と書類郵送申請に分岐します。

申請方法 必要なもの 発行までの目安
オンライン申請 マイナンバーカード+NFC対応スマートフォン 最短即日
書類郵送申請 印刷した申請書(実印押印)+印鑑証明書 約1週間

郵送申請の場合は取得まで時間がかかるため、申請締切から逆算して早めに着手することを強くおすすめします。gBizIDプライムはほかの補助金を申請する際にも必要なことが多いため、取得しておいて損はありません。

gBizIDプライムの取得方法

①gBizID公式サイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)にアクセスする

②「GビズIDアカウントの作成をはじめる」ボタンをクリックする

gBizIDプライムの取得①

gBizIDプライムの取得②

③「プライムアカウントを申請する」をクリックする

gBizIDプライムの取得③

④事前チェックで「申請者の区分(法人代表者 or 個人事業主)」を選択する

gBizIDプライムの取得④

⑤「マイナンバーカードの有無」を選択する

gBizIDプライムの取得⑤

⑤の選択後、マイナンバーカードあり→オンライン申請フロー、なし→書類郵送申請フローへと分岐します。どちらの場合も、以降の手順は画面の案内に従って進めることができます。

申請ステップ(2)IT導入支援事業者・ITツールの選定

自社の課題を解決できるITツールを取り扱う、国に登録された「IT導入支援事業者(ベンダー)」を探して相談します。

導入するツールも国の事前登録品である必要があるため、ベンダーとの連携は申請全体の出発点です。支援実績の豊富なベンダーを選ぶことが、採択率を高めるうえでも有効です。

申請ステップ(3)事業計画の策定と共同申請

支援事業者のサポートを受けながら、専用ポータル上に自社の経営状況やツール導入による生産性向上計画(数値目標)を入力し、共同で申請します。

この事業計画の内容が採否を左右する最大のポイントです。

申請ステップ(4)採択発表・交付決定後の契約

審査通過後、「交付決定通知」が届いてから初めてソフトウェアの契約および代金の支払いを行います。交付決定前の事前契約・事前支払いは補助対象外となるため、順序を誤らないよう注意が必要です。

申請から交付決定までの期間は、おおよそ1か月〜1.5か月が目安です。

申請ステップ(5)システム導入・実績報告と補助金の入金

システムを実際に導入・稼働させた後、支援事業者を通じて事務局へ支払い証憑(銀行振込の控えなど)を提出します。内容が確認されたうえで、補助金が入金されます。

採択後も3年間にわたる効果報告が義務付けられており、労働生産性の向上目標が未達の場合は補助金の一部返還を求められることがあります。

葬儀社が活用できる具体的なシーン

スーツの男女

紙の台帳やベテランスタッフの経験則に依存したアナログな管理から脱却し、少人数でも安定したサービスを提供するために、以下のシーンで活用が進んでいます。

デジタル化・AI導入補助金の活用シーン

活用シーン(1)顧客管理・営業支援|CRMで情報の属人化を解消する

生前相談の履歴、過去の施行内容、ご遺族の家族構成、法要のスケジュールなどをクラウド上で一元管理することで、担当者が不在でもタブレットから顧客情報をすぐに確認できる体制が整います。

また、一周忌や三回忌のタイミングに合わせた自動通知の仕組みを構築することで、アフターフォローの漏れも防ぐことができます。

活用シーン(2)バックオフィス効率化|クラウド会計・見積もりソフトの導入

複数の寺院や仕入れ業者(生花・料理等)との請求・支払い業務を、インボイス制度に完全対応したクラウド会計ソフトで処理できるようにすることで、経理担当者の手作業を大幅に削減できます。

また、葬儀専用の見積もり作成ソフトを導入することで、ご遺族にタブレットで内訳を確認してもらいながら、その場で明朗な見積もりを提示できる商談スタイルへの移行も可能です。

活用シーン(3)勤怠・シフト管理|24時間稼働の現場に対応した仕組みづくり

24時間365日対応が求められる葬儀業において、夜間搬送やイレギュラーな施行が重なるスタッフのシフト管理と残業時間の把握は難しい課題です。スマートフォンから打刻できるクラウド勤怠管理システムを導入することで、労務リスクの軽減と働きやすい環境の整備を同時に進めることができます。

葬儀専用ツールでも補助対象になる|「スマート葬儀」の活用事例

スマート葬儀
引用:スマート葬儀ホームページ

「葬儀社向けのシステムは補助金の対象外では?」と思われている方もいるかもしれませんが、葬儀業に特化したクラウドシステムでも補助対象ツールに認定されている実績があります。その代表例が、LDT株式会社が提供する葬儀社向けクラウド管理システム「スマート葬儀」です。

「スマート葬儀」とはどんなツールか

スマート葬儀は、LDT株式会社が提供する葬儀社向け特化型のクラウド管理システムです。

顧客・施行情報の一元管理、オンライン参列、香典・供花のキャッシュレス対応、スタッフのタスク管理など、葬儀社の業務課題に直結した機能を網羅しています。
詳細は公式サイト(https://smartsougi.jp/)をご参照ください。

IT導入補助金2025まで5年連続で対象ツールに認定

LDT株式会社は、経済産業省が推進する「IT導入補助金2025」においてIT導入支援事業者として採択され(株式会社KIZASHIとのコンソーシアム登録)、スマート葬儀が補助金交付対象ツールとしてIT導入補助金2025まで5年連続で認定されています。

補助金を活用してスマート葬儀を導入する場合、月額料金の24か月分が補助対象となります。IT導入補助金2025時点での補助率は最大2/3、補助上限額は最大350万円であり、通常より大幅に低い自己負担での導入が可能です。

葬儀社が補助金申請を進めるうえでの示唆

スマート葬儀の事例が示しているのは、「葬儀業の課題に合ったツールを選べば、補助金申請のハードルは想定より低い」という点です。

IT導入補助金は申請者とITツールの組み合わせが審査の出発点になります。葬儀業の実務に精通したベンダーや、葬儀社向けの申請サポート実績を持つ支援事業者とパートナーを組むことが、採択率を高めるための現実的なアプローチです。

どのようなツールが自社に合うか迷っている段階であっても、まずは複数のベンダーに相談することから始めることをお勧めします。

経済産業省「デジタル・AI省エネ手引き」が示す方向性

経済産業省

2026年3月3日、経済産業省資源エネルギー庁は「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」を公表しました。

国際的にも、IEA(国際エネルギー機関)のレポート「Energy and AI」において産業分野でのAI活用によるエネルギー最適化の重要性が指摘されており、日本の第7次エネルギー基本計画にもデジタル技術を活用した操業の最適化が明記されています。こうした動きは製造業にとどまらず、施設を運営するあらゆる事業者に関わる潮流です。

「見える化→データ分析→制御自動化」|3段階ロードマップと葬儀社への応用

手引きでは、デジタル利活用の段階を「見える化」「データ分析」「制御自動化(AI)」の3段階に整理しています。自社の現状に合わせて段階を踏むためのロードマップとして活用できます。

段階 内容 葬儀社・斎場への応用例
見える化 センサー等で稼働状況・電力消費をデータ化し、一元管理する 斎場の空調使用状況や安置施設の電力消費をリアルタイムで把握する
データ分析 蓄積データをAIが分析し、無駄(ロス)を特定・提示する 葬儀スケジュールと連動していない不要な空調稼働や設備の不具合をAIが検知する
制御自動化 AIが最適な制御値を自動で設定・実行する 外気温や予約状況に基づき、斎場全体の空調・照明をAIが自動で最適制御する

「見える化」から始めてデータを蓄積し、「データ分析」で無駄を特定したうえで、「制御自動化」へと段階を踏む流れが基本です。一足飛びに自動化を目指す必要はなく、まず自社の消費実態を「数字で把握すること」が、すべての改善の出発点となります。

まとめ|補助金を活用して社内DXを前進させるために

データ分析

デジタル化・AI導入補助金は、葬儀社の顧客管理・経理・勤怠といった課題を低い自己負担でシステム化できる制度です。ただし採択率は通常枠で30〜40%台まで低下しており、「ITツールの導入で労働生産性をどう高めるか」を数値で示す事業計画の質が採否を左右します。

準備の優先順位は、①gBizIDプライムの早期取得、②業務課題と3年間の数値目標の整理、③実績あるIT導入支援事業者への早めの相談、④過去採択歴がある場合の重複プロセス確認、⑤経営層主導の推進体制づくりの順です。

補助金による業務効率化を入り口に、施設運営のコスト最適化まで視野に入れた中長期的なデジタル化計画を描くことが、今後の葬儀社経営における重要な視点です。

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