葬祭ディレクターとあわせて持ちたい|遺品整理士資格の取得方法やメリット・年収を解説
葬儀後に必要となる対応の1つに、遺族の方々が行う故人の遺品整理があります。
昨今の超高齢化社会においては、死後だけでなく、生前における終活の一環として顧客が求める対応策の1つとなりつつあります。
そう遠くない未来、自分が亡くなった後の遺品整理を身近な方に委ねるだけではなく、遺品整理の専門家である「遺品整理士」に頼むのが一般化するかもしれません。
葬儀社様におかれましても、お客様からのお問い合わせにより、遺品整理士の資格取得が必要となる可能性があります。
そこで今回は、葬儀社様スタッフが取得すべき資格のひとつ「遺品整理士」について、概要やメリット、取得方法、年収について解説いたします。
もくじ
葬儀社が遺品整理士を在籍させるメリット
葬儀社従業員が取得すべき資格として代表的なのは「葬祭ディレクター」でしょう。
しかし現在では、ほとんどの葬儀社様が「葬祭ディレクター」を在籍させているため、他社との差別化を図るうえで、効果は限定的になりつつあります。
また、葬儀の施行以外にさまざまなアフターサービスを用意している葬儀社様も増えていることから、関連資格の所有者を在籍させておけば、優位性を高められるでしょう。
そういった意味で「葬祭ディレクター」があわせ持ちたい資格には以下のようなものがあります。
- 終活ライフケアプランナー
- 終活アドバイザー
- 終活カウンセラー
- 終活コーディネーター
- グリーフケア資格
- 終活士
- 遺品整理士
- 海洋散骨ディレクター
- 海洋散骨アドバイザー
遺品整理士とは?
遺品整理士とは、故人の遺品を整理・処分する業務を行う有資格者のことを指します。
遺品整理士資格は故人の遺品整理に携わる「遺品整理業」として働くためにあると有利な資格の1つで、一般社団法人日本遺品整理士協会が認定する民間資格です。
葬儀業界における「葬祭ディレクター」に近い資格といえます。
>>『葬儀社の資格「 葬祭ディレクター 」の資格取得方法やメリット・年収を解説』
遺品整理業界および葬儀社で働く方などが資格を取得し、協会に認定されることで一定の知識と技量を証明できます。
令和4年4月時点で、遺品整理士が所属する企業として登録しているのは1019社に上っており、今後も資格取得を目指す個人および企業は増加するでしょう。
遺品整理は不用品回収ではない【悪徳業者から遺族を守る】
遺品整理士は、不用品回収業者ではありません。
遺品は故人が生前、大切にされてきた物品ですし、ご遺族の方にとっては故人との思い出の品です。
遺品整理士は、故人の遺した物品を丁寧に扱い、処分が必要なものはご遺族の方の思いを汲み取りながら適切に整理整頓します。
また、遺品整理士は、法律で規定された国家資格ではないことから遺品整理士資格がなくても遺品整理は可能です。
しかし、昨今では「不用品回収」と名乗り故人の大切な物品を乱暴に処理したり、ご遺族に対する安易な誘い文句を謳ったりなどで、悲しい思いをする年配の方が増えています。
>>『葬儀屋さんのホームページにおける遺品整理サービスのご紹介方法まとめ』内『遺品整理業者のトラブル事例』
そこで、ご遺族を守るために誕生したのが遺品整理士という資格です。
遺品整理業界の健全化を図るために民間資格として設けられたという背景があることがわかります。
参考:総務省『遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書』
遺品整理と特殊清掃の違い
人が亡くなってからの片づけには、遺品整理のほか、特殊清掃があります。
遺品整理を行う業者の中には、特殊清掃も担当する場合があるため、違いが不明瞭になりがちです。
以下に遺品整理と特殊清掃の違いをまとめましたので、参考にしてみてください。
遺品整理 | 特殊清掃 | |
やること | ・遺族に代わり故人の物品を整理整頓する ・必要な場合は買取の手配 ・遺品整理後の清掃 ・不用品の回収、廃棄 |
・遺族に代わり付着した血痕や体液などを清掃し、家を完全に元に戻す ・衛生管理 |
場所 | ・故人の住宅 | ・孤独死などでの遺体発見現場 ・ゴミ屋敷状態になった家屋 |
必須項目 | ・遺族の気持ちを汲み取るホスピタリティ ・重いものを運ぶ体力 |
・リフォームの知見 ・消臭技術 ・血や臭いへの耐性 |
遺品整理士の業務内容
遺品整理士の業務内容は、以下の通りです。
- 遺品の分別と整理
- 処分の手配
- 遺品の保存や引き取り
- 家屋の清掃
故人の遺品には、ご遺族にとって思い出の深い物品や大切なものが含まれるため、遺品整理士は、ただ物品を片づけるだけに留まりません。
それぞれ、簡単にご紹介します。
遺品の分別と整理
まずは、遺品の分別および整理です。
故人が亡くなった際に遺された遺品といっても、以下のように多岐にわたります。
- 家具
- 家電製品
- 生活用品
- 衣服
- 書籍
- 写真
- 故人のコレクション
遺品整理士は、上記でご紹介した遺品を適切に分別・整理し、ご遺族が遺品整理する際に生じがちな混乱や迷い、ご負担を適切に捌き、軽減します。
処分の手配
続いて挙げられるのが、遺品の処分手配です。
遺品整理士は、遺品の処分方法をご遺族と相談したうえで、適切な手配を行います。
例えば、不用品の買取や寄付のほか、粗大ゴミとしての処分やリサイクル・廃棄処分などが一般的です。
大切な方が亡くなった直後で悲しみを背負うご遺族に代わり、物品の処分手配を適切に行うことで、ご遺族の心労を軽減します。
遺品の保存や引き取り
そして、遺品の保存や引き取りでも遺品整理士が活躍します。
例えば、家族や親族が引き取るものや、保存したいものがある場合は、遺品整理士がしっかり取りまとめ、保存や引き取りに関する手配を行います。
家屋の清掃
最後に、家屋の清掃です。
故人が亡くなった家屋の清掃も、遺品整理士の業務の1つです。
故人が亡くなった直後、場合によっては適切に清掃ができない場合があります。
しかし、遺品整理士が遺品の整理整頓と同時に清掃を行うことで、ご遺族は安心して家屋を管理者などへ引き渡せます。
葬儀社様や遺品整理業者が、特殊清掃業者あるいは特殊清掃に関する資格を所持していると、お客様は一括で依頼しやすいですね。
遺品整理士の資格を取得することで得られるメリット
遺品整理士の資格を取得することで、葬儀社様が得られるメリットを以下に挙げてみました。
- 遺品整理に関する専門的な知識や技術の習得に役立つ
- お客様から安心・信頼を獲得できる
- 葬儀社の業務拡大につながる
- 法律や規制への適合性が高まる
- 同業者と情報交換ができる
それぞれについて簡単にご紹介いたします。
遺品整理に関する専門的な知識や技術の習得に役立つ
葬儀社様の社員あるいは会社全体で遺品整理士の資格を取得することで、遺品整理に必要な専門的な知識や技術を習得できます。
遺品の分別や整理方法、処分方法だけでなく、清掃方法などを適切に行うための知識や技術を身につければ、お客様へ葬儀後のアフターサービスも提供可能です。
また、遺品整理は故人のご遺族にとっては精神的な負担が大きいほか、時間的な制約もあります。
遺品整理に長け、適切に扱える専門家である遺品整理士の手を借りることで、ご遺族の迷いや負担を軽減できます。
お客様から安心・信頼を獲得できる
遺品整理士の資格があれば、お客様からの信頼も得られます。
遺品整理は、故人との別れを迎えるご遺族にとって非常に大切な作業の1つです。
単に物品を処分するだけではなく、遺族とのコミュニケーション能力やマナーなども求められます。
遺品整理に関する専門的な知識や技術を持つことで、お客様に葬儀後のアフターサービスも同時に依頼できる安心感を与えられるため、より葬儀社様への信頼感が増すでしょう。
また、新規に遺品整理業として独立開業される場合や、すでに遺品整理業を業務とされている事業者様の場合も、遺品整理士として資格認定を受けたことや遺品整理士の資格を持つ社員についてホームページやSNSで紹介することで、お客様からの厚い信頼を得た形で活動可能です。
葬儀社の業務拡大につながる
遺品整理士の資格を持ったスタッフを雇うことで、葬儀社様にとっては業務の更なる拡大につながる可能性があります。
『葬儀屋さんのホームページにおける遺品整理サービスのご紹介方法まとめ』という記事で『葬儀社ホームページでの「遺品整理サービス」紹介事例』としてご紹介していますが、大手葬儀社様では、お客様が抱える葬儀以外の問題を解決するために、遺品整理や生前整理、出張買取という名目で遺品整理をサービスに取り入れるケースが見られるようになりました。
自社に遺品整理士の資格を持つスタッフがいることで、お客様目線から見ても葬儀以外も相談しやすく、事業拡大の足がかりになりますね。
法律や規制への適合性が高まる
遺品整理士の資格を持つことで、法律や規制への適合性が高まります。
例えば、遺品整理を業務とする場合、遺品整理士資格と合わせて「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」や警視庁が定める「古物商許可証」などの法律や規制を遵守して業務に当たっていることの証明が可能です。
なお、遺品整理士資格の講座内容には、法規制とのかかわりに関する項目があります。
したがって、遺品整理士の勉強をしてきた方にとっては、法規制に関する知識が充分あるといえますね。
同業者と情報交換できる
遺品整理士資格を取得すると、一般社団法人遺品整理士認定協会への会員登録が認められますので、しっかりとした同業者との情報交換もしやすくなります。
遺品整理士の資格は民間資格であるため、資格がなくても、実際に遺品整理の実務に影響はありません。
しかし、同業者間の情報共有といった意味では民間資格を取り、団体からの情報だけでなく、懇親会などに参加することは有益なのではないでしょうか。
遺品整理士の資格取得方法
遺品整理士の資格取得には、一般社団法人遺品整理士認定協会が発行する通信講座の受講と課題提出による試験合格が必須です。
教材は以下の通りです。
- 教本
- 資料集
- DVD
申込みを経て自宅に届く教材を利用し、2カ月の間で課題を提出することが求められます。したがって、しっかり教材を学べば、取得難易度は低めといってよいでしょう。
受講期限を過ぎそうな場合は、期日内に協会に申し出れば無料で受講期間の延長が可能ですので、働きながら自身のペースで学べる点が魅力です。
受験資格について
遺品整理士は、反社会的勢力に該当しなければ、年齢や学歴・資格関係なく誰でも受講可能です。
試験の内容・申請について
自身で学習を進めた後、問題集の全設問に回答のうえ協会へ郵送やWebで一括提出をし、基準に達していた場合は遺品整理士として認定されます。
認定後は協会への入会・実際に活躍するという流れです。
なお、問題集の回答において、解答用紙やデータ形式には決まった指定がなく、解答の文字数には特に制限がないそうです。
認定証について
合格後は、遺品整理士認定証書と認定カードが発行されます。
また、遺品整理士資格のポスターもいただけるため、お客様に見えるところに飾れます。
資格取得費用について
2023年4月現在、遺品整理士の資格取得から合格後までに合計3万5,000円発生し、以降は協会会費を2年ごとに納付することとなります。
詳細は以下の通りです。
入会費 | 2万5,000円 |
会費(認定手続き含む) | 1万円(2年間有効) |
出典参考:養成講座申込 | 遺品整理士認定協会
なお、費用は銀行振込のみとなります。
遺品整理士の年収について【求人時の目安】
遺品整理士の年収は地域によって異なりますが、おおよそ200~800万円ほどと幅広いです。
遺品整理士の社員求人を確認すると、資格手当を支給している企業もあるようです。
求人する場合
遺品整理士を求人する場合は、協会発行の認定証の有無を確認するとよいでしょう。
また、遺品整理業務は、ご遺族の自宅を訪れる訪問ビジネスです。
業務上、一般的な常識と清潔感、相手への気配りができ、体力がある人物を応募要項に挙げることを検討しましょう。
ご遺族にとって、大切な方の遺品を整理するという重要な業務であるため、お客様の不安や迷いに対して先回りし、解消できることが望ましいです。
なお、葬儀社様にとっては、遺品整理士有資格者について、自社ホームページに顔と名前を出すことになることがあるため、応募者には企業の顔として顔出し・名前出ししても問題ないかしっかり確認しましょう。
遺品整理士と組み合わせであったほうがよい資格
遺品整理士と組み合わせてあったほうが良い資格が複数あります。
会社として取得したほうがよい資格と、遺品整理士である社員が保持すべき資格に分かれますので、ぜひ参考にしてみてください。
会社としてあったほうが良い資格
会社としてあったほうが良い資格を以下にご紹介します。
- 一般廃棄物収集運搬許可(市町村)
- 古物商許可(警察)
- 産業廃棄物集取運搬許可(都道府県)
- 自転車防犯登録所(警察)※解除も可能
遺品整理で扱う遺品のほとんどが家庭生活から出た一般廃棄物として扱われるため、市町村発行の「一般廃棄物収集運搬許可」があると安心です。
また、遺品の買取や再販を目的とする回収もおこなう場合は、併せて警察庁が発行する「古物商許可」も必要です。
なお、遺品整理士として業務に当たる場合、庭や物置に積まれた瓦やコンクリートブロックといった一般廃棄物では処理しきれない物の回収を依頼されるケースもあります。
上記のような物は「産業廃棄物」という扱いになるため、「産業廃棄物集取運搬許可」もあると対応もスムーズです。
社員が持ち合わせたほうが良い資格
遺品整理士として活躍する社員の方がいらっしゃる場合は、以下の免許も忘れないように取得を促したり、支援したりしましょう。
- 自動車免許 ※MT対応(国家資格)
- 中型自動車免許 ※MT対応(国家資格)
遺品整理で使用するトラックが2トントラックが一般的であることから、社員に遺品整理士は中型運転免許証が、ほぼ必須です。
最後に
今回は、葬儀社様が取得すべき資格の1つ「遺品整理士」について詳しく解説いたしました。
遺品整理士は、単なる不用品回収業者ではなく、ご遺族の気持ちを汲み取ったり、故人の気持ちを汲み取ったうえで遺品を整理整頓するサービス業です。
資格の取得が難しいと思われがちですが、民間資格という点もあり、協会が認定する通信教育をしっかり受講すれば、難易度は低いといえます。
昨今の核家族化、高齢化社会に向けて遺品整理士への遺品整理の依頼が増加するといえます。
ご遺族の方や本人にとっても、遺品整理士資格がある方に依頼を望む未来もそう遠くないのではないでしょうか。
葬儀社様が、新たに遺品整理サービスを検討される場合は、外部の遺品整理業者を探すほか、自社でも遺品整理士資格を持つ社員の育成に力を入れることも視野に入れましょう。
本記事が現在葬儀社などで従事していて、遺品整理士の資格取得を検討している方の参考になれば幸いです。