葬祭ディレクターとあわせて持ちたい|グリーフケア士の取得方法やメリット・年収を解説
近年、悲しみや喪失感を抱える人々への心のケアが求められる社会情勢となっています。
その中でも、葬儀に関わる業界では、お客様の悲しみに寄り添い、心のケアを提供することが重要な役割となりつつあるようです。
そんな中、医療関係資格を持たなくても、(互助会の)葬儀社様が社員に奨励できるのが「グリーフケア士」認定資格です。
グリーフケア士認定資格を持つことで、悲しみや喪失感を抱える人々に対して、専門的な心のケアが提供できます。
そこで今回は、グリーフケア士について、概要や資格取得方法、メリット、年収についてご紹介いたします。
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
葬儀社がグリーフケア資格を在籍させるメリット
葬儀社従業員が取得すべき資格として代表的なのは「葬祭ディレクター」でしょう。
しかし現在では、ほとんどの葬儀社様が「葬祭ディレクター」を在籍させているため、他社との差別化を図るうえで、効果は限定的になりつつあります。
また、葬儀の施行以外にさまざまなアフターサービスを用意している葬儀社様も増えていることから、関連資格の所有者を在籍させておけば、優位性を高められるでしょう。
そういった意味で「葬祭ディレクター」があわせ持ちたい資格には以下のようなものがあります。
- 終活ライフケアプランナー
- 終活アドバイザー
- 終活カウンセラー
- 終活コーディネーター
- グリーフケア士(今回ご紹介)
- グリーフケアアドバイザー
- 終活士
- 遺品整理士
- 海洋散骨ディレクター
- 海洋散骨アドバイザー
グリーフケア士とは?
「グリーフケア士」とは、悲しみや喪失感を抱える方々に対して、心のケアを行う専門職として認められる資格です。
「一般財団法人 冠婚葬祭文化振興会」が互助会会員向けに主催する資格であり、大切な家族やペットを亡くされた悲しみや喪失感を抱えるご遺族に対して、心のケアを提供することを目的としています。
グリーフケア士認定資格は、2009年4月に設立し、2010年4月に上智大学に移管された日本初のグリーフケア専門機関である上智大学グリーフケア研究所が監修している点からも、通常の民間資格とは異なった権威ある資格だといえるでしょう。
グリーフケアと葬儀社の関係性
グリーフケア士資格を持つことで、葬儀社社員がご遺族の方々とより良い関係を築き、感謝される存在になれるでしょう。
「グリーフ」とは、日本語で深い悲しみや悲嘆、苦悩を示す言葉です。
葬儀社様におかれましては、ご遺族の悲しみと触れ合うことも多くあるため、切っても切り離せない関係にあるといえます。
具体的には、葬儀やお墓参りなどの場面で、遺族の方々と接する機会が多い葬儀社社員の方々が、グリーフケア士としての知識やスキルを活用できます。
なお、『葬儀屋.jp』の姉妹サイトである、『葬研』でもグリーフケアについて注目しており、さまざまな情報を提供させていただいております。
グリーフケア士と他のグリーフケア資格との違い
一般社団法人 冠婚葬祭文化振興会が主催するグリーフケア士は、主に互助会事業者に勤務されている方を対象としているようです。
一方、その他グリーフケア資格の中には、業界を限定せず一般を対象としたものもあります。
例えば「グリーフケアアドバイザー」認定資格は、日本グリーフケアアドバイザー協会が主催するカウンセリングやアドバイスを提供するための資格です。
こちらは看護師だけでなく、社会福祉士や心理士、カウンセラー、介護福祉士ほか、葬儀関連業界の方など、さまざまな専門職の方が挑戦できます。
グリーフケア士の業務内容
グリーフケア士の業務内容は、主にご遺族に対して、心のサポートや支援を行うことです。
一般社団法人 冠婚葬祭文化振興財団が掲げるグリーフケア士の専門性を確認しましょう。
<グリーフケア士の専門性>
1.ライフサイクルの節目におけるグリーフの諸相を深く理解し、業績主義・自我主義優位の現代社会において潜在化してしまっている、文化的・伝統的・宗教的儀礼を熟知し、適切に実施できる。
2.グリーフの現場に直接招かれる専門職として、自分の感性を十分に活用しながら、対象者と誠実に向き合うことができる。
3.大きなグリーフによって不調をきたしている方を、医療・福祉等の対人援助諸専門職と連携して支えることができる。
4.地域資源と積極的に関係を築き、皆がグリーフを憶えて生きることができる共感的な社会の建設の推進者となることができる。
5.大規模な事件、事故、災害における心のFirst Aidの担い手となることができる。
例えば、お客様が悲しみに沈んでいる場合、葬儀社社員が適切な言葉や行動でサポートすることで、その方の心に寄り添うことができます。
また、グリーフケア士としてのスキルを活かすことで、ご遺族の感情に寄り添った適切かつより良いコミュニケーションを取り、お客様にとって最適な葬儀やお墓参りの方法の提案が可能です。
必要に応じて医療現場など専門機関への橋渡しを行うことも、グリーフケア士の業務です。
グリーフケア資格を取得することで得られるメリット
グリーフケア資格を取得することで得られるメリットとしては、以下の通りです。
- 一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団の認定グリーフケア士として活躍できる
- 正しいグリーフケアの知識や実践力を身に付け、段階を踏んで能力を高められる
- グリーフケアが必要なさまざまな現場で、資格取得により培われた能力を発揮できる
- 医療・介護など専門家とのつながりが持てる可能性がある
- 協会のロゴマークが使用可能
また、医療や介護などの分野で働く場合には、専門的な知識を身につけることができるため、キャリアアップにもつながるでしょう。
グリーフケア士資格の取得方法
グリーフケア士資格は、通常のグリーフケア士資格と上級グリーフケア士の2種類あります。
最初に受験することになるグリーフケア士資格においては、グリーフケアの基礎知識を持ち、グリーフに気付く能力のほか、ケアができる人に橋渡しができる能力を備えているとみなされます。
受験資格・申し込みについて
グリーフケア士資格は、主に互助会事業者に勤務する方向けの資格のようですが、18歳以上であれば所得可能なようです。
以下に受講資格をまとめました。
- 18歳以上で互助会事業者等に勤務している方(役職員、派遣・出向社員、契約社員、パート・アルバイト等を含む)
- 職務を通してグリーフケアの実践が必要な方(医師、看護師、訪問介護員、介護支援専門員、(産業)保健師、カウンセラー等)
- 悲嘆を抱えた方に寄り添いケアを行う方(遺族会、患者会)
- グリーフケアに関心の高い方
参考:グリーフケア資格認定制度概要 – 一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団
試験会場について
グリーフケア士資格試験は、全国の試験会場にて、インターネット経由で配信する試験形式(CBT試験)で実施されます。
業務委託をするCBT試験の運営会社が契約する試験会場であれば、全国どこからでも受講可能です。(年末年始除く)
2021年6月現在の試験会場数は約300会場とのことですが、利便性から今後も試験会場は増えていくかもしれません。
出題内容・試験時間について
グリーフケア士認定資格は、テキストから50問、出題されます。
テキストは受験申し込み後に届きますので、試験前に自主学習を行います。
グリーフケア士のテキストは以下の章で構成されています。
グリーフケア士テキスト グリーフケアの理論と実際Ⅰ
- 第一単元 死別と悲嘆
- 第二単元 グリーフケアの理論と歴史
- 第三単元 儀礼論と葬制論
- 第四単元 死を忘れた社会
- 第五単元 傾聴と物語
- 第六単元 ケアの代償とセルフケア
- 第七単元 グリーフケア士の行動指針(ガイドライン)
試験時間は60分です。
なお、試験会場ではテキストを見ながら回答できませんので、難易度は中程度だといえます。
認定証について
100点満点中70点以上を取れば合格とされ、合格者には、資格認定証と認定カードが交付されます。
また、グリーフケア士として活躍するにあたって、一般社団法人冠婚葬祭文化振興財団への認定登録も必要です。
更新は5年を区切りで、更新費用を支払えば、試験なしで認定資格の更新が可能です。
- 更新料5,500円(税抜価格5,000円)
資格取得費用について
資格取得にかかる主な費用は、テキスト代、受験料、登録料込みで2万7,500円(税込み)です。
受験から登録、登録後の認定証・認定カードの発行までの一式の費用ですので、わかりやすいですね。
試験不合格者や受験後に取り消すという場合は、受験料等は返還不可とのことです。
ただし、受験して合格しなかった場合、以下の費用で再受験ができます。
- 再受験料8,800円(税抜価格8,000円)※2023年5月現在
上級グリーフケア士について
「グリーフケア士」認定資格に合格した方は、上位資格である「上級グリーフケア士」の取得が目指せます。
グリーフケア士資格よりも深いグリーフケアの知識だけでなく、現場でのグリーフケアのサポートや支援ができる能力が備わるように設計されるようです。
試験自体は公式ホームページ上では2022年11月~12月を予定しているとアナウンスがありますが、2023年以降の試験実施については未定です。
受験資格 | 1.18歳以上であること 2.「グリーフケア士」の資格を取得していること |
試験方式 | CBT試験(知識能力判定)と実践能力(ワーク判定) |
資格検定料 | 上級グリーフケア士:8万2,500円 (ワーク判定、テキスト代、受験料、登録料含む、税抜価格7万5,000円) |
※2023年5月時点
出典:上級グリーフケア士資格 – 一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団
グリーフケア資格の年収について【求人時の目安】
他の民間資格と同様、「冠婚葬祭文化振興財団のグリーフケア士」という形での求人応募は現時点で見当たりません。
そのため、「冠婚葬祭文化振興財団のグリーフケア士」としての年収については、残念ながら公式な統計データが存在しません。
したがって、一般的な葬祭ディレクター資格取得者などと同じ約300万円〜600万円程度でしょう。(経験や勤務先によって異なります)
求人する場合
葬儀社様がグリーフケア資格資格取得者を求人する場合は、歓迎スキルや必須スキルの1つとして、本有資格者を歓迎する文言を沿えると求職者からも分かりやすいため、おすすめです。
特にグリーフケア士においては、ご遺族に対して、適切なコミュニケーションスキルを持って接することができることが求められます。
グリーフケアというのは、人の悲しみや辛い心などと向き合わなければならない、デリケートな職務であるためです。
葬儀社での業務に加え、グリーフケア士としての業務を担当することがあるため、柔軟な対応力や責任感、傾聴スキルなどが必要ですので、併せて記載しましょう。
また、グリーフケア士有資格者に対しての手当や待遇などアピールする場合は、その旨も明確に記載することで、求職者も幅広く募れるでしょう。
グリーフケア士と組み合わせられる資格
グリーフケア資格と相性が良いのは「葬祭ディレクター(1~2級)」です。
また、グリーフケア士は、葬儀社社員としての職務に加えて、グリーフケアのプロフェッショナルとして活動することも可能です。
以下の経験や資格がある方は有利だといえます。
- 葬祭ディレクター以外の葬儀・終活関連資格
- 終活コーディネーター
- メンタル心理カウンセラー(民間資格)
- メンタルケアカウンセラー(民間資格)
- チャイルドカウンセラー
- ペット関連資格(ペット葬祭事業の場合)
最後に
今回は、「グリーフケア士」認定資格についてご紹介いたしました。
グリーフケア士は、大切な方を亡くし、悲しみや喪失感を抱えるご遺族を中心に心のケアを提供する認定資格です。
葬儀社様の社員がグリーフケア士資格を取得することで、悲しみに暮れながらも葬儀を遂行しなければならないご遺族の心に寄り添い、心の支えとなれるとともに、社員の自己成長やキャリアアップにつながるメリットがあります。
そう遠くない未来には、葬儀社様のサービスの一貫として、グリーフケアを実施することが当たり前となるかもしれません。
本記事が、現在葬儀社などに従事していて、葬儀に関する資格取得を検討している方の参考になれば幸いです。