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従業員エンゲージメントとは?葬儀業界の人材定着・採用力向上の決定的要因を徹底解説

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葬儀業界を取り巻く人材採用の厳しい現実に、多くの経営者様が頭を悩ませていらっしゃるのではないでしょうか。

  • 給与や福利厚生を改善したのに、なぜ定着しないのか?
  • 有料求人媒体に投資しているのに、なぜ応募が来ないのか?
  • やっと採用できても、2ヶ月で退職してしまうのはなぜか?

実は、これらの課題を根本的に解決する鍵が「従業員エンゲージメント」にあります。
単なる満足度を超えて、社員が心から「この会社で働き続けたい」「会社に貢献したい」と感じる状態を作り出すことこそが、持続的な採用力と定着率向上の決定的要因なのです。

本記事では、エンゲージメントの本質から具体的な向上施策まで、葬儀業界の人材課題解決に直結する情報を詳しく解説いたします。

エンゲージメントとは何か?モチベーションとの違い

エンゲージメントとは「やる気」だけじゃない

従業員エンゲージメントとは、「仕事と職場に対する従業員の関与と熱意」と定義されます。
従業員エンゲージメントについては以下の記事でも詳しく解説しております。

葬儀業におけるエンゲージメント向上の教科書 〜社員が”働いて良かった”と思える会社へ〜

米国ギャラップ社の最新調査によると、エンゲージメントの高い従業員は、組織の使命や価値観に共感し、自ら進んで組織の成功に貢献しようとします。

これは、単に仕事に満足しているというだけでなく、組織そのものに対する強い愛着や思い入れ(=感情的なコミットメント)を意味しています。

ウィリアム・カーン(1990年)は、エンゲージメントを次の3つの側面から説明しました。
身体的エンゲージメント(努力の投入)、認知的エンゲージメント(集中と没頭)、感情的エンゲージメント(仕事への感情的つながり)です。
つまり、「体も、頭も、心も、すべてが仕事に向いている状態」。この3つが揃ってこそ、真のエンゲージメントが生まれるのです。

モチベーションとの違いは「自発性と貢献意識」

モチベーションが「特定のタスクを遂行するための短期的な原動力」であるのに対し、エンゲージメントは「組織との長期的な感情的結びつき」です。

  • モチベーション…特定のタスクを遂行するための短期的な原動力
  • エンゲージメント…組織との長期的な感情的結びつき

例えば、葬儀業界において、モチベーションの高い従業員は目の前のご遺族への対応を完璧にこなしますが、エンゲージメントの高い従業員は組織の理念に共感し、自ら改善提案を行い、困難な状況でも組織に留まり続けます。

実際の職場では、4つのタイプの従業員が存在します。
「エンゲージメントもモチベーションも高い」理想的な従業員、「エンゲージメントは高いがモチベーションが低い」忠誠心はあるが活力に欠ける従業員、「モチベーションは高いがエンゲージメントが低い」高パフォーマンスだが転職リスクの高い従業員、そして「両方とも低い」要注意従業員です。

葬儀業界でエンゲージメントが続かない理由

葬儀業界は、「感情労働」の代表的な職種です。
イタリアの葬儀業界研究(2020年)では、229人の従業員を対象に調査が行われ、69.1%が毎日ご遺族と接し、52.6%が毎日ご遺体を目にしているという過酷な労働実態が明らかになりました。

このような環境では、社会的な偏見、上司の不適切な対応、仕事が家庭に及ぼす悪影響が、主なストレス要因となっています。

一方で、同じ調査から「仕事の意義深さ」「家族からの肯定的な反応」「社会的サポート」が、従業員のエンゲージメントを支える重要な要素であることも示されました。

つまり葬儀業界においては、仕事の社会的意義をきちんと伝え、職場のサポート体制を整えることが、他の業界以上にエンゲージメント維持のカギとなるのです。

なぜ今、エンゲージメントが重要なのか

データで見る「辞めにくい会社」の特徴

最新のギャラップ社の調査によると、エンゲージメントの高い従業員は、そうでない従業員に比べて離職率が大幅に低いことが明らかになっています。
たとえば、エンゲージメントが上位25%のチームは、下位25%のチームと比べて、高離職率の職場において平均43%も離職率が低いという結果が報告されています。

マーサの2025年従業員離職率調査によると、全体の離職率は13.5%まで低下し、2022年の24.7%から大きく改善しました。

しかし一方で、エンゲージメントの低い従業員の51%が積極的に転職活動をしているのに対し、エンゲージメントの高い従業員では43%にとどまっています。

人材確保が難しい葬儀業界のような業種にとって、この差は致命的です。

エンゲージメントの高さはサービスの品質に直結

ギャラップ社の「従業員エンゲージメントのメリット」によると、エンゲージメントの高い従業員は生産性が23%高く、高エンゲージメントのチームを持つ組織では収益性が21%高いことが明らかになっています。
さらに重要なのは、品質面での欠陥が41%減少し、作業中のケガや事故も64%削減されるという点です。

感情労働が中心となる葬儀業界において、こうした品質や安全性の向上は、ご遺族様への対応品質に直結します。

エンゲージメントが採用に効く理由

LinkedInが過去に実施した調査では、強い雇用ブランドを持つ企業は、採用コストを大幅に削減しながら、優秀な人材を効率的に確保できることが示されています。
また、エンゲージメントの高い従業員の75.6%が、積極的に自社を推奨する“ブランド大使”としての役割を果たしていることも明らかになっています。

さらに、社員紹介による採用は、その他の採用手法と比べて離職率が約40%も低いという結果も報告されています。

こうしたデータは、人材不足が深刻な葬儀業界において、既存従業員のエンゲージメントを高めることが、採用力強化の最も有効な手段であることを物語っています。

日本の従業員エンゲージメントは世界と比べてどうなのか

2024年にギャラップ社が発表した調査によると、日本で「仕事に意欲的かつ積極的に取り組んでいる」と答えた従業員の割合はわずか6%にとどまり、世界で最も低い水準であることが明らかになりました。
一方、PwCの2024年の調査では、界全体の従業員エンゲージメントは60%と、前年の56%から改善が見られ、職場への意欲に前向きな変化が起きていることが示されています。

これに対し日本の従業員には、将来に対して保守的な傾向が根強いことも浮き彫りになっています。
たとえば、新しい働き方に適応する準備ができていると答えた人は45%で、グローバル平均の77%を大きく下回っています。
また、会社の将来に対して楽観的な見方をしている人の割合も33%にとどまり、世界平均の60%より低い水準となっています。

社員が「会社に貢献したい」と思う心理の源泉とは?

葬儀業における採用難易度4

エンゲージメントを高める3つのカギ

ダニエル・ピンクの研究とその後の検証により、人の※内発的動機づけを高める3つの要素が明らかになりました。それは、自律性(Autonomy)、熟達(Mastery)、目的(Purpose)です。
※内発的動機づけとは、報酬や評価ではなく、「やりたい」「成長したい」といった内側からの意欲で行動すること

自律性を持つ従業員はそうでない従業員より、エンゲージメントが著しく高くなることが多くの研究で示されています。同様に、自身の仕事が大きな目的につながっていると実感できる傾向にあります。これは単なる裁量権ではなく、仕事の進め方、使用するツール、意思決定への参加を含みます。葬儀業界では、ご遺族への対応方法に一定の自由度を与えることが該当します。

熟達への欲求は、継続的なスキル向上の機会を意味します。挑戦的だが達成可能な目標設定、定期的なフィードバック、クロストレーニングの機会が重要です。葬儀業界では、新しい葬送形態への対応力向上などが該当します。

目的意識を持つ従業員は72%高い生産性を示します。葬儀業界の場合、「人生の最期に寄り添い、遺族の悲しみを支える」という崇高な目的を日々の業務と結びつけることが不可欠です。

感情労働だからこそ気をつけたい心の負担

医療・福祉分野の研究から、感情労働には3つのタイプがあることが明らかになっています。

  • 表層演技(内面の感情を偽って表情や態度を作ること)
    最もストレスが大きく、バーンアウト(燃え尽き症候群)に直結しやすいとされています。
  • 深層演技(実際に感情を作り込む努力をすること)
    負担はやや軽減されるものの、長期的には疲弊しやすい傾向があります。
  • 自然な表現(内面から湧く感情を無理なく適切に表すこと)
    理想的ですが、現場では必ずしもそれが可能とは限りません。

葬儀業界では、ご遺族様の悲しみに寄り添いながらも、専門職としての冷静さを保つという高度な感情調整が求められます。

このバランスが精神的負担となりやすく、American Hospital Associaitionの調査による「看護師の62%がバーンアウトを経験している」という実態と重なる部分があり、葬儀業界でも同様のリスクが潜んでいると考えられます。

日本人社員ならではのやる気の出し方

心理的安全性謙虚なリーダーシップ知識共有は、エンゲージメントに大きく影響することがわかっています。
日本の職場では、個人の主張よりも集団の調和が優先され、上下関係への配慮が求められます。

このため、欧米型の個人主義的なエンゲージメント施策は必ずしも効果的に機能しません。
代わりに、チームの一体感先輩後輩関係の尊重集団としての達成感の共有が従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める鍵となるのです。

国内企業のエンゲージメント向上施策による成功事例

トヨタの現場主導文化に学ぶ仕組みづくり

トヨタ自動車は、1990年代に直面した労働生産性の危機を、包括的なカイゼン(改善)文化の導入によって乗り越えました。
現場の従業員に生産ラインを自ら停止する権限を与え、定期的な反省会(ハンセイ会)を実施し、さらに現場からの改善提案を積極的に取り入れることで、現場主導の改善活動を組織全体に浸透させました。

その結果、こうした取り組みは、生産性の向上、品質の安定、従業員の当事者意識の醸成に大きく貢献しました。
特に、従業員が問題を発見した際に自らラインを停止し、即座に課題解決に取り組む文化は、トヨタの強さの象徴として広く知られています。

このアプローチは、葬儀業界にも以下のように応用が可能です。

  • サービス品質の継続的な改善
  • ご遺族のニーズに即応できる現場権限の付与
  • 感情対応や接遇の改善を目的とした定期的な振り返りセッション
  • さまざまな状況に対応できるクロストレーニング※一人の従業員が複数の職務や役割を習得すること

これらを実践することで、葬儀業界でも現場主導のサービス改善と従業員エンゲージメントの向上が期待できます。

加賀屋旅館のおもてなしに学ぶ“先回りの気づかい”

旅館、ホテル、レストランなどの中小企業が実践する「おもてなし」は、感情労働のエンゲージメント向上の好例です。
先回りしてニーズを察知する訓練、スタッフへの権限委譲、文化的な浸透体験、季節イベントの企画などを通じて、高い顧客満足度強いリピート率を実現しています。

加賀屋旅館の事例では、先回りのおもてなし訓練、部門間の情報共有と連携、スタッフとゲスト間の継続的フィードバックの仕組み、集中的なスキル開発とクロストレーニングにより、国際的な競争優位性を確立しました。

加賀屋旅館の工夫

中小企業でもできる!IT活用の第一歩

政府支援による中小企業のデジタル変革では、KaoNaviのようなタレントマネジメントシステムを導入することで、個別の企業において離職率の改善や生産性の向上といった成果につながる事例が報告されています。

葬儀業界では、キャリア開発追跡のためのデジタルシステム、透明な評価・昇進基準、感情労働訓練へのアクセス、過酷なスケジュールに対応するワークライフバランス施策が応用可能です。

成功事例に共通するポイント

これらの事例から、葬儀業界で実施可能な具体的施策が見えてきます。

第一に、現場スタッフへの権限委譲です。ご遺族の個別ニーズに即座に対応できる裁量を与えることで、従業員の自律性とサービス品質が向上します。

第二に、継続的改善の仕組み化です。月次の振り返りミーティングで、感情的に困難だった事例を共有し、対応方法を改善していく仕組みが必要です。

第三に、デジタルツールの活用です。スケジュール管理、引き継ぎ情報の共有、研修アクセスなどをデジタル化することで、24時間体制の負担を軽減できます。

最後に、仕事の意義の再確認です。定期的にご遺族からの感謝の声を共有し、社会的使命を再認識する機会を設けることが、感情労働の持続可能性を高めます。

まとめ~葬儀業界におけるエンゲージメント向上への道筋~

エンゲージメントは単なる従業員満足度ではなく、組織の持続的成功の鍵です。特に葬儀業界のような感情労働が中心の業界では、従業員の心理的well-beingが直接的にサービス品質に影響します。

日本の低エンゲージメント状況(6%)は危機的ですが、トヨタやおもてなし企業の事例が示すように、文化に根ざした改善は可能です。重要なのは、自律性・熟達・目的の3要素を、日本的な集団主義の文脈で実現することです。

葬儀業界の経営者・人事担当者の皆様には、まず現状のエンゲージメント測定から始め、段階的に権限委譲、継続的改善、デジタル化、意義の再確認を進めることをお勧めします。

初期投資は必要ですが、離職率削減、生産性向上、採用力強化により、確実に投資を回収できます
従業員が「この会社で、この仕事を続けたい」と心から思える職場づくりこそが、人材不足時代を生き抜く唯一の道なのです。

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