葬祭ディレクターとあわせて持ちたい|グリーフケアアドバイザーの取得方法やメリット・年収を解説
近年、悲しみや喪失感を抱える人々への心のケアが求められる社会情勢となっています。
その中でも、葬儀に関わる業界では、お客様の悲しみに寄り添い、心のケアを提供することが重要な役割となりつつあるようです。
そんな中、医療関係資格を持たなくても、(互助会の)葬儀社様が社員に奨励できるのが「グリーフケアアドバイザー」認定資格です。
グリーフケア士認定資格を持つことで、悲しみや喪失感を抱える人々に対して、専門的な心のケアが提供できます。
そこで今回は、グリーフケアアドバイザーについて、概要や資格取得方法、メリット、年収についてご紹介いたします。
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
葬儀社がグリーフケアアドバイザーを在籍させるメリット
葬儀社従業員が取得すべき資格として代表的なのは「葬祭ディレクター」でしょう。
しかし現在では、ほとんどの葬儀社様が「葬祭ディレクター」を在籍させているため、他社との差別化を図るうえで、効果は限定的になりつつあります。
また、葬儀の施行以外にさまざまなアフターサービスを用意している葬儀社様も増えていることから、関連資格の所有者を在籍させておけば、優位性を高められるでしょう。
そういった意味で「葬祭ディレクター」があわせ持ちたい資格には以下のようなものがあります。
- 終活ライフケアプランナー
- 終活アドバイザー
- 終活カウンセラー
- 終活コーディネーター
- グリーフケア士
- グリーフケアアドバイザー(今回ご紹介)
- 終活士
- 遺品整理士
- 海洋散骨ディレクター
- 海洋散骨アドバイザー
グリーフケアアドバイザーとは?
「グリーフケアアドバイザー」とは、悲しみや喪失感を抱える遺族や周囲の方に寄り添い、心のケアを行う専門職です。
一般社団法人日本グリーフケア協会の情報によると、資格取得者の主な業務は、大切な方を亡くした遺族の悲しみを癒やし、回復に向けた支援を提供することとされています。
この資格を持つことで、悲しみや喪失感を抱える方々に対して心のケアを行う専門職として認められます。
グリーフケアと葬儀社の関係性
「グリーフ」とは、日本語で深い悲しみや悲嘆、苦悩を示す言葉です。
葬儀社様におかれましては、ご遺族の悲しみと触れ合うことも多くあるため、切っても切り離せない関係にあるといえます。
グリーフケアアドバイザー資格を持つことで、葬儀社社員がご遺族の方々とより良い関係を築き、感謝される存在になれるでしょう。
具体的には、葬儀やお墓参りなどの場面で、遺族の方々と接する機会が多い葬儀社社員の方々が、グリーフケアアドバイザーとしての知識やスキルを活用できます。
なお、『葬儀屋.jp』の姉妹サイトである、『葬研』でもグリーフケアについて注目しており、さまざまな情報を提供させていただいております。
グリーフケアアドバイザーに見られる商標登録について
特に注目したいのは「グリーフケアアドバイザー®」という文言が商標登録(®)されているという点です。
葬儀業界にとって、自社への顧客吸引力を増加させるために「商標登録」が重要事項として挙げられています。
したがって、グリーフケアアドバイザーという名称が商標登録されていることにより、ブランドが確立され、競合他社との差別化が可能です。
詳しくは『葬儀社は商標登録するべき?商標登録済み代表的な葬儀関連会社も紹介』という記事を参考にしてみてください。
グリーフケアアドバイザーの業務内容
グリーフケアアドバイザー認定者は、主に看護師や葬儀関係者、介護関係者などとして活躍しており、悲しみから回復していく方々の成長を支えるやりがいのある仕事です。
グリーフケアアドバイザーが担う具体的な業務は、ご遺族の精神面、身体面でのサポートが中心となります。
葬儀社様の場合、医療関係者やプロのカウンセラーの方との連携により、ご遺族の回復を支援できるでしょう。
精神面でのサポート
グリーフケアアドバイザーは、ご遺族の精神面でのサポートを行います。
例えば、悲しみに沈んでいるご遺族に対して、以下の場を提供することが挙げられます。
- 感情を肯定する
- ご遺族の話に耳を傾ける
- 適切な言葉や行動で心に寄り添う
- 感情を吐き出してもらう
特に我慢強い人ほど感情を隠しがちです。
グリーフケアアドバイザーはご遺族が感情を表現し、故人の死を受け入れて回復し成長するまでサポートします。
葬儀社様はグリーフケアアドバイザーとしてのスキルを活かすことで、ご遺族の感情に寄り添った適切かつ、より良いコミュニケーションがとれます。
さらに、ご遺族の悲しみに正しく寄り添えることから、最適な葬儀やお墓参りの方法の提案が可能です。
身体面でのサポート
ご遺族が、睡眠障害や食欲障害、体力の低下などの身体的な違和感や疲労感に陥らないよう見守ることも、グリーフケアアドバイザーとって大切な業務の1つです。
グリーフは根の深い問題であるため、これらの身体的な症状が、時を選ばず混在して現れることもあります。
大切な方との死別に悲しみを感じるご遺族の中には、食欲や睡眠に問題が生じることも考えられます。
しかし、長期にわたる不十分な食事や睡眠不足は、身体と心に負担をかけがちです。
グリーフケアアドバイザーは、遺族の体調を注意深く見守り、身体の健康を保つために配慮します。
必要時に専門家に橋渡し
必要に応じて、ご遺族と医療現場など専門機関への橋渡しを行うことも、グリーフケアアドバイザーが担う業務の1つです。
医療資格を所持していない限り、葬儀社社員は医療行為ができないため、ご遺族に対する精神的・身体的な医療処置は直接行えません。
しかしグリーフケアアドバイザーは、ご遺族の健康状態や身体的な問題に関心を持ち、必要に応じて適切な専門家への紹介や情報提供を行える立場です。
したがって、適切な専門家への紹介や連携を行い、遺族が必要なサポートを受けられるよう、健康面も考慮した総合的なサポートも提供できます。
グリーフケアアドバイザーを取得することで得られるメリット
グリーフケア資格を取得することで得られるメリットとしては、以下の通りです。
- 葬儀社社員としての仕事のやりがいが増す
- 取得期間が短くハードルが低い資格であり、仕事や事業の幅を広げやすい
- グリーフケアの学習により自己成長に役立つ
以上のメリットにより、グリーフケアアドバイザーの資格取得は葬儀社様にとっても付加価値となり得ます。
短期間で取得できることや、業務拡大の一端を担える可能性があるため、仕事や事業の拡大につながる可能性も高いでしょう。
また、グリーフケアの学習は社員自身の成長にも役立つため、他の葬儀関連資格や終活関連資格と組み合わせれば葬儀社社員にとっても有益です。
グリーフケアアドバイザー認定資格の取得方法
グリーフケアアドバイザー認定資格は、2級と1級、特級(上級)の3つあります。
どの級も数日間で構成された講習が実施されますが、試験は実施されないため、資格取得の難易度は低めといえるでしょう。
とはいえ、限られた時間の中で、各級で学ぶグリーケアに必要な知見や経験を身に付けなければならないため、自主学習や真剣に学ぶ姿勢が求められます。
受講資格・申し込みについて
まずは各級の受験資格と申込み方法について見てみましょう。
2級 | 1級 | グリーフケアアドバイザー® 特級(上級) | |
受験・受講資格 | ・18歳以上(申請時) | ・申請時に2級講座の修了認定を受けた方 | ・1級講座の修了認定を受けた方 ・レポート等の評価も考慮し協会から推薦を受けた方 |
申し込み方法 | ホームページ上でお申込み | 要問合せ ※ 申し込み希望は、既に1級時に尋ねています。1度の人数は10名 |
上記の通り、2級から順当に検定受験することにより、上位検定への受験資格が得られるようです。
受講については、2級と1級は毎年5月・12月頃、一般社団法人日本グリーフケア協会ホームページ上に設定される申し込みフォームから申し込みます。
なお、2級・1級認定講座は先着順の受付けのようですので、受講したい方はホームページをこまめにチェックしましょう。
認定講座について
講座は以下の年2回を予定しているそうです。
- 2~3月
- 8~9月
各級で学べることを以下にまとめました。
2級 | 1級 | グリーフケアアドバイザー® 特級(上級) | |
講習時間 | 1日 | 2日 | 3日 |
会場 | 指定の現地会場(東京)※2023年5月時点 | 記載なし | |
内容 | ・座学中心 ・グリーフケアの基本 ・悲嘆のプロセス ・遺族の心情 ・死別悲嘆の援助法および注意点 |
・グリーフケアの経緯 ・予期による心痛(予期不安) ・複雑な悲嘆 ・自助目標と演習法 ・グリーフケア実施時の注意 ・グループ療法 ・ゲスト講師による講話や演習など、グリーフケアの実践にかかせない学習内容 ・グループワークを通して、アドバイザー同士の交流をもてる |
・知識をもとに演習を徹底する ・グリーフケアのワークショップのケアの実際 ・トレンディな問題とその対処法 ・実践(災害、移植、被害者支援など) ・グリーフケアのワークショップやケア講座の開催をおこないたい方のために、必要とする知識・技術・ノウハウなどを学習 |
開催頻度 | 年2回(2~3月、8~9月)を予定 | 要問合せ |
学習内容は級ごとに異なりますが、主に日本におけるグリーフや、グリーフによる反応と悲しみを癒すアプローチ法について学び・身につけられるように重点的な学習が行われます。
講習は座学のほか、1級になると参加者同士のグループワークもあるため、実践的なケア方法も習得が可能です。
なお、受講は2023年5月時点では、東京都内会場のみで実施されており、地方での研修の開催は予定されていません。
予習・復習について
一般社団法人日本グリーフケア協会では、グリーケアアドバイザーとしての予習・復習のために推薦図書を紹介しています。
推薦図書の中でも、『はじめて学ぶグリーフケア』第2版という書籍は、2級講座にて進呈されるそうです。
資格取得費用について
各級の資格取得に必要な費用は以下のようです。
2級 | 1級 | グリーフケアアドバイザー® 特級(上級) | |
費用 | ・3万3,000円 | ・5万5,000円 | 記載なし |
※変更の可能性あり
グリーフケアアドバイザーの年収について【求人時の目安】
「一般社団法人日本グリーフケア協会のグリーフケアアドバイザー」としての年収については、残念ながら公式な統計データが存在しません。
他の民間資格と同様、「一般社団法人日本グリーフケア協会のグリーフケアアドバイザー」という形での求人は現時点で見当たらないためです。
したがって、一般的な葬祭ディレクター資格取得者などと同じ約300万円〜600万円程度でしょう。(経験や勤務先によって異なります)
また、一般社団法人日本グリーフケア協会からの仕事の紹介はないそうですので、あくまで執筆時点(2023年5月時点)では、葬儀社様および社員の業務に付加価値をつけるための資格といえそうです。
求人する場合
葬儀社様がグリーフケアアドバイザー資格取得者を求人する場合は、歓迎スキルや必須スキルの1つとして、本有資格者を歓迎する文言を沿えると求職者からも分かりやすいため、おすすめです。
特にグリーフケアアドバイザーにおいては、悲しみから抜け出せないご遺族に対して、適切なコミュニケーションスキルを持って接することが求められます。
グリーフケアは、人の悲しみや辛い心などと向き合わなければならない、デリケートな職務であるためです。
葬儀社での業務に加え、グリーフケアアドバイザーとしての業務を担当することがあるため、柔軟な対応力や責任感、傾聴スキルなどが必要ですので、併せて記載しましょう。
また、グリーフケアアドバイザー有資格者に対しての手当や待遇などアピールする場合は、その旨も明確に記載することで、求職者も幅広く募れるでしょう。
グリーフケアアドバイザーと組み合わせられる資格
グリーフケア資格と相性が良いのは「葬祭ディレクター(1~2級)」です。
また、グリーフケアアドバイザーは、葬儀社社員としての職務に加えて、グリーフケアのプロフェッショナルとして活動することも可能です。
以下の経験や資格がある方は有利だといえます。
- 葬祭ディレクター以外の葬儀・終活関連資格
- メンタル心理カウンセラー(民間資格)
- メンタルケアカウンセラー(民間資格)
- チャイルドカウンセラー
- ペット関連資格(ペット葬祭事業の場合)
最後に
今回は、「グリーフケアアドバイザー」認定資格についてご紹介いたしました。
グリーフケアアドバイザーは、大切な方を亡くし、悲しみや喪失感を抱えるご遺族を中心に心のケアを提供する認定資格です。
葬儀社様の社員がグリーフケアアドバイザー資格を取得することで、悲しみに暮れながらも葬儀を遂行しなければならないご遺族の心に寄り添い、心の支えとなれるとともに、社員の自己成長やキャリアアップにつながるメリットがあります。
そう遠くない未来には、葬儀社様のサービスの一貫として、グリーフケアを実施することが当たり前となるかもしれません。
本記事が、現在葬儀社などに従事していて、葬儀に関する資格取得を検討している方の参考になれば幸いです。