【墓石店なら知っておきたい】今更聞けない墓石業界の『商品種類・ジャンル』について
墓石業界が取り扱うのは、その名の通り墓石の建立が基本ですが、それ以外にも、墓石のリフォームや小口工事、墓じまい、霊園の開発や墓石用品の販売など、さまざまな付帯案件、付帯アイテムがあります。
そこでこの記事では、墓石業界が取り扱う施工サービスや商品アイテムについて、ジャンル別に分かりやすくご紹介いたします。
もくじ
墓石の新規建立
墓石店の一番の主要事業は、なんといっても墓石の新規建立です。1件当たりの単価も高く、売上において大きな比重を占めます。
ただ最近は、少子高齢化、宗教観の変化、不景気などを理由に、お墓を不要と考える人も少なくありません。
お墓を巡る市場はより熾烈になり、お墓そのもののあり方も多様化しているため、墓石業界としては、墓石というハード面(形状やデザイン)だけに固執するのではなく、礼拝や継承も含めたお墓参り全体をデザインして、ユーザーに安心感を与えられる提案が求められています。
伝統的な和墓
昔ながらのお墓のことを、通称「和墓」と呼びます。下台、上台の上に、軸石(竿石や仏石とも呼ぶ)が乗る、いわゆる三段墓です。
細かい仕様は地域によって異なりますが、特に遺骨を納める「カロート」の違いによって、お墓の形状も変わります。
遺骨を地中で土に還す地下カロートや、地上にカロートを設けてその中に遺骨を並べる地上カロート(丘カロートとも呼ぶ)などがあります。
いま現在も和墓の人気は根強く、和墓を建立を希望する人は一定数います。
モダンな洋墓
近年スタンダードになりつつあるのがモダンデザインの「洋墓」です。
和墓が縦に長いのに対して洋墓はワイドなデザインが多く、安定感があります。
また、和墓では「〇〇家」などの家名や、「南無阿弥陀仏」などの宗派の教義に即したことばを刻みますが、洋墓では「愛」「絆」など、家族のつながりを象徴する言葉を自由に刻むのも特徴です。
和墓と異なり、伝統的なしきたりがない分、顧客のニーズをしっかりと汲み取り、それをきちんとした形でデザインに落とし込むことが求められます。
墓地と墓石のセット販売
自前で墓地を保有している墓石店であれば、墓地と墓石をセット販売できます。
通常の墓石建立までの流れは、まず施主が墓地を確保して、その後、その区画にあわせたデザイン、石種、費用などから墓石を具体的に形作っていきます。
しかし、墓石店が墓地を保有しているのであれば、予めその区画に見合った墓石をデザインしておき、セット販売にすることで、墓地の永代使用料と墓石の建立を一括で受注できます。
墓石のリフォーム・小口工事
墓石店の仕事は、新規建立だけではありません。すでに建っているお墓のリフォームやメンテナンス、小口工事も、墓石店の大切な事業です。
文字彫刻
埋葬する方の戒名、俗名、命日、年齢などを、墓石や墓誌(霊標)に彫刻します。納骨式までに作業を完了させておくのが基本です。
文字彫刻は、かつては石材を工場に持ち帰って行っていましたが、最近では持ち運びができるサンドブラスト用のコンプレッサーを用いた現場彫刻が主流です。
霊標の新設
ご先祖さまの戒名が軸石の左右に彫刻してあり、新たに彫刻するスペースがなくなってしまった場合は、墓石のそばに霊標を新設します。
霊標は、石材の費用に加えて、文字の彫刻費用や据付費用が発生するため、墓石店においては中規模単価の案件となります。
傾き直し
お墓は大変重量があるものです。長い年月同じ場所に建っていることから、地盤が沈んで墓石が傾くことも少なくありません。
特に昭和年代のお墓は、いまよりしっかりと基礎工事がなされていないことが多く、墓石の傾きが見られる傾向にあります。
傾き直しを行う場合、墓石を一度解体して、基礎部分からしっかりと施工し直して、再度墓石を据え付けるのが基本です。
クリーニング
墓石の表面に付着したコケや水垢などを除去して、墓石全体をクリーニングします。クリーニングの手法は墓石店によってさまざまです。
墓石用の専用薬剤を使用するところもあれば、あえて薬剤を使用せずに水と手できれいにするところもあります。
その他、スクレーパー、砥石、グラインダーなどを用いて、墓石の表面の汚れを磨き落すことも可能です。
ただし、どこまでの汚れが落ちるかは、石材の経年劣化の度合いによっても異なります。
雑草抜き・植木の伐根
足元から生えてくる雑草抜きは、お墓掃除の中でも特に労力を強いられる作業です。
こうした案件を代行することで長期的な施主との関係性構築が期待できます。
また、ひと昔前は墓域内に柘植の木などの低木を植えるのが人気でしたが、年月が経つことで根が地中に伸びて墓石を押し上げますし、枝葉が伸びるごとに剪定しなければなりません。
こうした理由から、植木の抜根を希望する人も多くいます。
防草施工
雑草や植木を抜いたあとに、防草施工をすることで、施主のお墓掃除の負担を大きく軽減できます。
施工方法はいくつかあります。モルタルで足元を固めてしまう、バラスを敷き詰める、「防草マサ」や「ストーンレジン」(松井文ショウ堂の製品)などを利用するなどが挙げられます。
花立や香炉のリフォーム
お花をお供えする花立も、古いものであれば水を抜く穴が空いていません。これだと汚れた水が花立の中に溜まったままになり、不衛生かつ石材の劣化を早めます。
横穴をあけ、ステンレスの花筒が納まるよう縦穴をもあけ直すことで、これらの問題を解決できます。
また、お線香を立てる香炉を新設することで、墓石を汚すことなくお墓参りができるようになります。
お墓参り代行
普段なかなかお墓参りができない人の代わりに、お墓参りを代行する業者もあります。
それを専門にしている事業者もいますが、墓石店が行うことで、お墓参りだけでなく、お墓の細かな劣化や損傷などを見つけて、クリーニングやリフォームの提案につなげることもできます。
墓じまい
昨今急速に需要が伸びているのが墓じまいです。
「あととりがいない」「住まいが遠方だ」「お墓参りが困難」などの理由から、既存の墓石を解体撤去し、別の場所にお骨を移す(改葬)ことを指します。
墓石の解体撤去工事
既存墓石を解体撤去処分します。石塔や玉垣などの石材だけでなく、地盤の基礎もすべて解体して、最終的に更地に戻します。
撤去した石材は、産業廃棄物運搬業者や処理業者によって再生砕石にします。
また、軸石のみ無縁塚に並べての供養を希望する人もすくなくありません。
新しい改葬先の提案・斡旋
墓じまいには、必ず遺骨の改葬が伴います。その際、自前の永代供養墓やお骨を受け入れる施設を保有しておくことで、墓石の解体撤去と遺骨の受け入れの両面で顧客をケアできます。
自前の施設を持っていなくても、永代供養を受け付けてくれる寺院などと提携しておくことができます。
改葬先となる施設については、次章で詳しく解説いたします。
新しいお墓・霊園の開発
自前の墓地、あるいは墓域を持つことは、墓石店にとって大きなメリットとなります。墓地の販売がそのまま墓石の販売にもつながるからです。
また、墓じまいや改葬が多い昨今、合祀墓をひとつ持っておくだけで、顧客の遺骨を受け入れることができます。
新しいお墓や霊園の開発については、挙げればキリがありませんが、代表的なものをご紹介いたします。
樹木葬霊園
樹木葬とは、墓標を石ではなく樹木にしたお墓のことです。
実際には、里山全体を墓域とする「里山型」や、都市型霊園の中に樹木葬区画を作る「霊園型」、霊園全体をガーデン風に造成した「ガーデン型」など、さまざまな形態があります。
また、樹木葬と謳うものの、石板プレートや石材によるモニュメントなどを併用するものも少なくありません。
樹木葬は相対的に墓石よりも安価で、将来的な墓じまいの際も墓石よりも低コストで実施できます。
永代供養墓
永代供養墓とは、遺骨を合葬墓に納め、故人の供養をお寺が永代にわたって行うものです。
永代供養墓のかたちも実にさまざまです。躯体の中に骨壺が並べられるタイプのもの、遺骨を預けたらすぐに土中に埋葬するもの、また樹木葬のお墓を永代供養墓とするところもあります。
墓じまい不要の墓石
少子高齢化の昨今では、「自分たちが生きている間はお墓に手を合わせたいが、万が一の時の墓じまいの不安を解消したい」というニーズが多くあります。
こうした傾向を踏まえて、墓じまい不要の墓石が人気を集めており、主にふたつのタイプに分けられます。
ひとつは、家族やお参りの人がいなくなったあとも墓石を解体せずに寺院や霊園の所有物として存続させ続けるというものです。
もうひとつは、10年や33年などの有期限で使用権を与え、使用期限が過ぎたら霊園側で墓じまいをするというものです。
この場合、将来的な墓じまいや永代供養の費用も、墓石の価格に含まれています。そのため、墓石そのものはコンパクトな傾向にあります。
また、樹木葬霊園の多くが、この有期限制を採用しています。
墓石用品の販売
このほか、お墓掃除やお墓参りで必要な墓石用品の販売も、墓石業界の大切な事業の一つです。
具体的には花立て、線香立て、塔婆立てなどのお供えのための用品、線香やローソク、桶やひしゃく、専用の掃除用品など、お墓参りのためのものなどが挙げられます。
終わりに
本記事では、墓石業界が取り扱う商品アイテムについて解説してきました。
墓石業界は、墓石の新規建立はもちろんのこと、既存墓石のリフォームやメンテナンス、墓じまい、霊園開発、墓石用品の販売など、その事業は多岐に渡ります。
葬儀屋.jpではこれからも、墓石や霊園に関する有益な情報をご提供していきます。日ごろの業務のお力添えになれば、幸いです。