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東京都の葬儀における作法としきたり

東京

東京都は日本の首都ということもあり、古くからの住人よりも地方出身者が多いという特徴があります。
3代以上続く、いわゆる「江戸っ子」が少ないため、地方に比べて伝統的な文化習俗が残りにくい環境です。

こういった事情から、葬儀にまつわる風習も23区外の市部にわずかに残るのみで、都心部の葬儀は全般的に標準化されています。

この記事では、東京都における葬儀の流れや特殊な火葬場事情、葬儀のしきたりについて紹介します。

東京の火葬場事情

火葬場

 

東京都(島しょ部を除く)には18か所の火葬場がありますが、人口に対して非常に少ない状態です。
特に人口が集中する23区内では、亡くなってから火葬までの待機期間が他の地域より長くなる傾向にあります。

23区内に公営斎場は2か所だけ

東京都には10か所の公営火葬場がありますが、そのうち23区内にあるのは都立 瑞江葬儀所臨海斎場の2か所だけです。
しかも臨海斎場は都営ではないため、都民のすべてが恩恵を受けられるわけではありません。

瑞江葬儀所

都立 瑞江葬儀所は都民と都民以外で火葬料金が異なり、都民(7歳以上)は59,600円ですが、都民以外は71,520円となっています。
「葬儀所」という名称ではありますが、実質的には火葬専門の施設で葬儀式場は併設されていません。
都立霊園と同様に運営母体が東京都のため、都民であれば誰でも一律料金で利用可能です。

臨海斎場

大田区にある臨海斎場は都立ではなく、港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区の共同事業です。
そのため、組織区(港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区)住民と、その他地域の住民で火葬料金が異なります。

組織区住民(12歳以上)の火葬料金が40,000円なのに対し、組織区外住民は80,000円と2倍となっており、12歳未満・胎児の料金も2倍です。
また臨海斎場には葬儀式場も併設されていますが、式場利用料金は組織区住民が56,000円なのに対し、組織区外住民では170,000円と約3倍の料金設定となっています。

民営斎場の火葬費用

東京23区内に7か所ある民営火葬場のうち、町屋斎場・四ツ木斎場・桐ヶ谷斎場・代々幡斎場・落合斎場・堀ノ内斎場の6か所は東京博善 株式会社が運営しています。
板橋区の戸田葬祭場だけは、事業主体が株式会社 戸田葬祭場です。

両社が設定している火葬料金は以下の通りです。

民営火葬場費用

上記の表をご覧いただくと、臨海斎場における組織区外住民の料金設定は民営火葬場(最上等)と同等、もしくは民営火葬場の方が安くなっているのに気が付きます。
このことから、組織区外住民が臨海斎場を利用するメリットは、ほとんど無いといっても過言ではないでしょう。

市町部では火葬料金が無料になるケースも

同じ東京都であっても、23区内と市町部では火葬に関する状況が大幅に異なります。
市町部では自治体が運営する公営火葬場も多く、自治体によっては火葬費用が無料になるケースも少なくありません。

市町部火葬費用

市町部であっても、国分寺市や三鷹市など公営斎場がない地域の住民は、府中市の多磨葬祭場に併設された民営火葬場(最上等:78,000円)などを利用するほかありません。

また公営斎場を利用可能な地域の住民でも、火葬までの待機期間が長くなる場合は、民営斎場を使わざるを得ないケースもあるようです。

繰り下げ初七日もやむなし

東京都は全般的に火葬場の数が不足しているため、必然的に火葬までの待機期間が長くなりがちです。

年間死亡者数と火葬施設数の関係性を見ると、1か所の火葬施設に対する年間死亡者数が342.9人なのに対し、東京都では4,317.9人と極端に多いのがよく分かります。

出典:衛生行政報告例 / 令和元年度衛生行政報告例 統計表 年度報

こういった事情から、タイミングによっては亡くなってから火葬までに1週間ほど必要になる場合もあるため、葬儀当日に行う式中初七日法要が、結果的に「繰り下げ初七日(くりさげしょなのか)」になるケースも発生しているようです。

東京都の一般的な葬儀

東京都の葬儀の流れは、通夜→葬儀・告別式→火葬の順に行われるのが一般的です。
さらに近年では参列者を遺族や親族、親しい知人だけにしぼった「家族葬」が主流になりつつあります。

参列者が多いのは葬儀より通夜式

参列者

東京都では日中に行われる葬儀・告別式よりも、夕刻から始まる通夜式への参列者が多いという特徴があります。
葬儀は平日・休日問わずに行われるため、勤務時間終了後でも参列しやすい通夜式に一般の弔問客が集中するためと考えられます。

通夜振る舞い(つやぶるまい)は全員参加

通夜式終了後の会食を「通夜振る舞い(つやぶるまい)」といいますが、東京都では原則的に通夜式に参列した方全員に酒食が提供されます。
特段の事情がない限り「通夜振る舞い」の料理には、1口だけでも箸をつけるのが礼儀です。

西日本でも「通夜振る舞い」は行われますが、東京都とは対照的に親族のみの参加が通例となっています。

そもそも通夜の習慣は、土葬時代の殯(もがり:故人と遺族だけで一定期間を過ごす葬送儀式)に由来するとされています。
その意味からすると、東京都の「通夜振る舞い」の習慣は、本筋から外れているといえるかもしれません。

火葬は葬儀・告別式後に親族だけで

東京都では、葬儀・告別式後に火葬場へ向かうのは遺族や親族のみで、一般弔問客は同行しません。

土葬が主流だった時代は、遺族や親族および近隣住民が葬列を組んで、棺を墓地まで運ぶのが当然でした。
しかし火葬が一般に普及して以降、一部地域を除いて近隣住民が火葬場に同行するケースは少なくなっています。

遺骨は全て骨壺に納める

 

東京都では火葬後の遺骨をすべて骨壺に収める「全収骨(ぜんしゅうこつ)」が一般的です。
そのため使用する骨壺も7寸(おおむね直径21㎝)が主流ですが、日本人の体格が大きくなっているため8寸を使用することもあります。

関東地方在住の方にとっては当たり前の習慣ですが、西日本では遺骨の一部(のど仏や頭骨など)を5寸ほどの骨壺に収める「部分収骨」が多くなっています。
主要部分以外の遺骨は火葬場に残して帰る習慣は、関東地方の方にとって不思議に感じるかもしれません。

しかし西日本の方からすると、骨壺に全骨を収めるために遺骨を押しつぶす方が、痛々しく感じるようです。

市部にわずかに残る葬送習慣

東京都における古くからの葬送習慣の大部分は消えてしまっていますが、多摩地区をはじめとした郊外では、ほんの一部だけ受け継がれています。
しかし徐々に行われる機会も減少しているため、いずれは消えゆく運命かもしれません。

逆さ臼(さかさうす)

東京都の稲城市周辺地域では、葬儀終了後に逆さにした臼の上に腰かけ、塩でお清めをする「逆さ臼(さかさうす)」と呼ばれるしきたりがあります。
しかし現在では、自宅に臼がある家はほとんどないため、紙に臼の絵を描いたものを逆さに張り付けた椅子で代用しているようです。

この風習の由来は定かではありませんが、臼と「失す(うす)」をかけて「悪いことをなかったことにする」という説や、臼を逆さにすることで「あなたの食事はありませんので、迷わず成仏してください」という意味があるという説など、さまざまな言い伝えがあるようです。

前火葬

骨葬

 

東京都西部のあきる野市や日の出町周辺地域では、葬儀前に火葬を行う「前火葬(まえかそう)」の習慣があります。

東北地方などに多い葬送習慣ですが、東京都では限られた範囲だけの風習のため、あきる野市や日の出町での葬儀に参列する場合は注意が必要です。
故人のお顔を拝んでからお別れしたい場合は、事前に火葬のタイミングを確認しておくことをおすすめします。

おわりに

葬儀社様ホームページのコラムとしてこのような記事の掲載をおこなっておくと、喪主様・ご遺族様・ご参列の方々も分かりやすく、興味を持たれる内容かもしれません。

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